企業のビジョンがない、既存のビジョンが実際の経営とマッチしていない。ビジョンに関する悩みを持っている経営者の方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。
このコンテンツでは企業がビジョンを作ることにどのような重要性があるのかという点から実際の作り方まで解説していきます。
最後には私たち、EOSが考えるビジョンのあるべき姿に関しても紹介します。是非最後までご覧になって実際に機能するビジョンを作る足掛かりにしてみてください。
企業におけるビジョンとは何か
ビジョンとは?
一般的に、「ビジョン」という言葉を用いる場面として「個人レベル」と「企業レベル」の二通りが考えられます。 「ビジョン」の意味を辞書で引くと、「将来のあるべき姿をえがいたもの」、「未来像」というような将来を表す言葉であることがわかります。 したがって、企業におけるビジョンとは、「企業がどこへ、どうやって行くのか」を「実現したい未来」と「世の中との接点」の二つの観点から書き記した言葉となります。
ここで1つ注意しておきたい点があります。ここで理解される一般的な意味でのビジョンと私たちが提供するEOSにおける「ビジョン」は意味が異なります。具体的には「ビジョン」にはミッションやパーパス、バリューも含まれています。
私たちEOSが考えるビジョンについては以下のリンクも参照してみてください。
>EOSがビジョンを制作、実現するために8つ項目に答えるだけでビジョンを構築できるツール
ビジョン – EOS JAPAN 起業家のための経営システム
例えば、Googleは「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」というビジョンを掲げています。 このGoogleのビジョンも、「実現したい未来」と「世の中との接点」両方の意味をまとめたものとなります。
経営理念、ミッション、バリューとの違い
「ビジョン」と同じ経営方針として掲げるもので、似て非なるものがあります。 それが「経営理念」、「ミッション」、「バリュー」です。 いずれも、企業の「存在意義」や「社会的正当性」を理解してもらうためのものとなります。それぞれの違いについて把握しましょう。
「ミッション(Mission)」=会社が取り組むべき「使命」
ex.)
-
- LINE「世界中の人と人、人と情報・サービスとの距離を縮めること」
- 楽天「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」
「バリュー(Value)」=社員が目標実現に向けて持つ「価値観」、「行動基準」
ex.)
-
- ソフトバンクグループ「努力って、楽しい。」
- 日立グループ「和・誠・開拓者精神」
「経営理念(Corporate Philosophy)」=会社が信条とする「哲学」
ex.)
- Google「ひとつのことを最大限に行うことがベストな道である」
これらと比較した「ビジョン」の位置づけは「ミッションを実現化させた将来像」であるともいえるでしょう。
なぜビジョンが必要なのか

ビジョンは行き先の共有のため
たとえ同じ企業であっても、部署や配属ごとに業種も事業も異なり、時には新規事業も生まれます。それが一人一人の仕事や組織の在り方に大きな違いを生みます。さらに、社会情勢が変化する一方、社内が旧態依然としたままだと、社会適合性を失ってしまうことや離職率をむやみに上げてしまうきっかけになります。 そのため、社員が一丸となって目指す「共通の行き先」を示し、共有する必要があります。
社員の行動の指針になる
社員が同じ目標と価値観を持つことによって、自分の仕事の意義を社員一人一人が明確化できます。それは、社内の一体感や労働意欲をかき立てるものとなります。 他にも、ビジョンそのものが、日々の仕事の判断軸とすることができたり、目標到達点に成り得ることからプロジェクトや仕事の検証や改善にも役に立ちます。
第三者に存在意義を理解してもらうため
ビジョンは、未来の顧客や社会に向けられたものです。つまり、ステイクホルダー(社員、顧客、株主)以外の外部の方に企業の「存在意義」や「社会的正当性」を理解してもらうためのものとなります。
ビジョンの作り方 5つのSTEP

STEP1:チームを組む
ビジョン作成を強力に推進するために、専門の経営層専属のチームを組みましょう。このチームメンバーは社内の様々な部門からプロジェクト方式をアサインします。 また、チームにおける直属の上司は、社内でも力のある担当取締役が就く事が多いです。これは、社内の各部署の協力を得られることなく、分裂してしまう事を防ぐためです。
STEP2:ビジョンを作る上での企業の考え方をまとめる
実際に、事業ビジョンを作成するにあたって、自社の歴史を振り返るところから市場の取り巻く環境まで広範囲にわたって検証します。当然、独自のビジョンを作成するプロセスであるため、半年以上の取り組みになることも十分あり得ます。 自社の歴史を振り返る際は、既存の社史をまとめた資料のみにとどまりません。経営層などへのインタビューやアンケートなどを実施して調べることもあります。他にも、当社を取り巻く社会や市場の将来性について分析します。
STEP3:事業、将来像を具体化する
社内外の状況を収集したら、それらの情報を俯瞰図のようにマッピングし、分類します。そこから導き出される会社の方向性を抽出することで、会社の事業内容や将来目指すべき会社としてのあるべき姿を具体的なキーワードに落とし込みます。
STEP4:ビジョンを言語化する
マッピングされたキーワードを使って、文章化します。具体的には、
・創業の経緯、社史や事業に対する思い入れ
・自社の持つ風土・資産・課題
・社会・市場の流れから想定できる将来
についてまとめましょう。
STEP5:ビジョンを浸透させる
ビジョンが完成したら、それで終わりではありません。作り上げたビジョンを実際にステイクホルダー(社員、顧客、株主)に浸透させることで初めて真価を発揮します。 例えば、
・ビジョンカードに記載して配る。
・各社員の名刺に記載する。
・社員手帳に記載する。
などの施策を施す必要があります。
ビジョン作りにおける注意点
変化することを考えて作る
現代は、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)をキーワードとするVUCAの時代といわれています。ビジョン作成時に予想した未来や市場、顧客のニーズが常に変わらないモノとは限りません。したがって、常に振り返りをし再構築する必要があります。策定にあたっての背景や現在に至るまでの経営トピック等を一度整理して、振り返っておくことが重要です。
実現可能なものにする
高邁なビジョンを掲げても、夢物語で終わってしまうと、ステイクホルダーの賛同は得られません。 この不確実性の高い時代だからこそ、実現性のあるものを意識して作る事が大事となります。
シンプルなものにする
難解な言葉や専門的な用語、読む人によって解釈が変わってしまう様な用語を可能な限り避けましょう。企業のビジョンは誰でも理解できるようなものにする必要があります。
EOSの考える企業のビジョン

ビジョンは機能しなくては意味がない
実際に機能するビジョンはシンプルなものです。例えば、経営戦略を何ページにもわたってまとめてみてもその戦略が機能するとは言えません。ビジョンの作り方のステップでも紹介した通り、実際にビジョンが会社に浸透しなければビジョンを作り上げたところで意味がありません。 では、このような実際に機能するビジョンはどのように作ればよいのでしょうか。 そこで、今回はビジョン・トラクションシートを紹介します。 EOS®(the Entrepreneurial Operating System®)は企業のビジョンは機能するものでないと意味がないと考え、「ビジョン・トラクションシート」を作成しました。以下の8つの項目に答えるだけでビジョンを構築することが可能です。
- コアバリュー=「あなたたちは誰ですか?、どんな価値観を持った集まりなんですか?」
- コアフォーカス=「御社の戦場はどこですか?、どこでなんのために戦っているのですか?」
- 10年目標=「御社はどこへ向かっているのですか?(長期目線)」
- マーケティング戦略=「上の10年目標に対してどういう手段でたどり着くんですか?」
- 3年イメージ=「企業のちょっと未来を想像する。」
- 1年計画=「3年イメージ達成のために今年中に必要なことは?」
- 石=「人間が集中できる90日間に必ず達成すること」
- 課題リスト=「1~7を進める上で浮き上がった問題点」
具体的にはこちらのリンクからご確認ください。
>EOSがビジョンを制作、実現するために8つ項目に答えるだけでビジョンを構築できるツール
ビジョン – EOS JAPAN 起業家のための経営システム
経営チームの構築でモチベーティブな会社を作る
企業のビジョンは社長が1人で作るべきではありません。なぜなら、社長一人では、各市場や分野に全て精通することができないからです。 経営チームを組む際は、
・業務の内容や重要性と必然性について理解できること
・仕事に対しての情熱が有ること
・仕事の遂行能力が有ること
に該当する人を探す必要があります。そのため、フロント、ミドル、バックオフィスの各部門の部長クラスでチームで制作する必要が生まれます。 このように、経営チームを作ることは、ビジョン作りのためだけに限らず、社員が経営に「参加」できるという満足感とモチベーションの維持にもつながります。
まとめ
企業のビジョンの作成方法について今回はご紹介しました。 私たちはビジョン・トランクションシートに限らず、起業家のために経営システムを設計する支援を行っています。 これまで、私たちは何千人もの起業家や経営者の支援を行ってきました。経営者・起業家としての壁にぶつかったら、EOSを使って、社員一丸となって同じ目標に迎える組織作りをしましょう。 EOSでは、忙しい起業家・経営者のために創られた、包括的なモデルとアプローチを用いることで、課題を永遠に葬り去り、フォーカス、規律、結果責任をもたらします。 実際に具体的なツールの解説動画については以下のアンケートからご覧になれます。 是非活用してみましょう!
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そして、もう一つおすすめするものは、『トラクション ビジネスの手綱を握り直す 中小企業のシンプル・イノベーション』です。この『トラクション』を読むことで企業経営における6つの最重要要素を理解することができます。トラクションとは実行力のこと。この本は単に、企業の経営責任者のためのものではありません。経営チームから全ての従業員までもを対象にしています。企業の構成員一人ひとりがビジョンを実現するために「実行」していく、そんな企業づくりのために必要な考え方とツールが詰まった一冊となっています。