ビジネス環境は日々激しく変化しています。モノのライフサイクルは短縮し、ヒトの雇用は流動化が進み、日本企業もジョブ型雇用の検討を進めています。このような「先が見えない」環境下、経営トップは社員に対して会社の将来像を示しづらくなっており、組織内部の「拠り所となるもの」「基準となるもの」が求められるようになってきました。
「会社にビジョンを浸透させたい」「価値観・行動基準を共有したい」と思い悩む経営者は少なくありません。今日は、ビジョンの定義・目的を明らかにした上で、ビジョンを組織に浸透させるためのポイント・プロセスについてお話します。
ビジョンを作っただけで満足していませんか?
会社の目標を達成するために「ビジョン」を策定したものの、作って終わりになってはいけません。しかし、残念ながら多くの従業員は、経営者の掲げる「ビジョン」を理解していません。故にビジョンは達成されずに終わってしまうのです。ここで「ビジョンが浸透しない」企業の典型例をいくつか紹介しましょう。- ビジョンをつくることがゴールになっている
- そもそも社長がビジョンを把握しないままに発信されている
- ビジョンが壮大すぎて「借り物」である
- ビジョンの分量が多すぎて実効性に乏しい
- 「目的地」は明確だが「行き方」が不明瞭で浸透しない
- ビジョンを浸透させるためのアクションがない(HPに掲載しているだけ)
- ビジョンに整合性がないため経営陣と管理職の「言うこと」が異なる
1つでも該当する項目があれば、ビジョンそのものを再検討する余地があると言えるでしょう。企業の「トラクション(実行力)」の実装は、ビジョンの共有から始まるからです。
EOSが定義するビジョンとは
ビジョン、ミッション、バリュー、ウェイ、経営理念、クレド、スピリット等、自社の目指す将来像や価値基準を示すものは様々です。EOSが定義する「ビジョン」とは、シンプルに会社が進むべき方向性のことです。一般的には「ミッション」「ビジョン」「バリュー」は別個に解釈されることが多いですが、EOSの考え方では、「ミッション」も「バリュー」も「ビジョン」に包含されます。ビジョンは組織体に機能しなければ何の価値もありません。機能するビジョンには、会社の「現在地」「目的地」「道のり」が明確に示されています。ここで言う「道のり」とは、たとえば「どういうペースで3年後の目標に進んでいくのか?」「3年後、1年後の目標を達成するための“四半期目標”が明文化されているか?」という具体的なプロセスを意味します。
従って、「1行だけ」のビジョンは、目的地が簡潔なビジョンとは言えますが「どのようにそこまで行くか」という道のり部分が不明瞭であり、不完全と言わざるを得ません。

企業がビジョンを打ち出すメリットとは?
そもそも、企業がビジョンを打ち出す目的とは何でしょうか?これについても、シンプルに考えることが大切です。第一に、ビジョンは「会社がどこを目指しているのか?」を明確にしてくれます。企業の文化や本当の姿を明らかにすることで、志を同じくする人を集めることができます。
第二に、ビジョンは、会社のチームワーク・生産性を向上させてくれます。ビジョンを共有することで「現在地」「目的地」「道のり」が明確になり、会社を船に例えると「オール」を漕ぐタイミングとスピードを合わせることができます。第三に、経営陣が従業員にビジョンを共有することで、従業員に「ビジョン達成に協力したい」という意欲を出させる効果があることです。そのため、10年目標などの長期目標の設定は、組織全体で議論した上で合意形成するとより効果的になります。
ビジョンを浸透させるための重要ポイント及びプロセス
ビジョンは適量に明文化する
会社にビジョンが浸透するためには、ビジョンそのものが明瞭、かつ、適量であることが重要です。ビジョンはできる限りシンプルに明文化し、A4で2枚以内に纏めることを推奨します。従業員がビジョンに触れる機会を設ける
明文化されたビジョンに「定期的に触れる機会」をつくることが大切です。例えば、従業員の目標設定や評価面談にビジョンを活用することは効果的でしょう。会社の価値観に一致する人材だけを採用する
採用面接では、会社の価値観に合致する人のみを採用します。尚、ここでの「価値観」とはEOSのビジョンに含まれます。四半期毎に全社員とビジョンを確認する
4半期に全社員とビジョンを確認します。部門ごとの会議でレビュー、4半期ごとに「最優先事項」の進捗を確認し、次の4半期の「最優先事項」の設定・共有し、結果的に1年の目標達成につなげていくのです。従業員レベルまで巻き込んでビジョンを確認し、目標・ビジョンを「自分事」でとらえることが最も重要です。ここで気をつけたいのは「目標の数は少ないほうが良い」ということです。多くの企業は、1年間でたくさんの目標を立ててしまいがちですが、一度にすべてをやろうとしても達成できずに挫折感を味わえば逆効果となってしまうからです。
EOSツール「ビジョン・トラクションシートの活用」
EOSのツール「ビジョン・トラクションシート」を使えば、8つの質問に答えるだけでビジョンを書面化した上で明確にすることができます。日本語版ファイルもダウンロードが可能ですので、是非手に取って確かめてください。『ビジョン・トラクションシート』 https://download.eos-japan.org/vto
そして、もう一つおすすめするものは、『トラクション ビジネスの手綱を握り直す 中小企業のシンプル・イノベーション』です。この『トラクション』を読むことで企業経営における6つの最重要要素を理解することができます。トラクションとは実行力のこと。この本は単に、企業の経営責任者のためのものではありません。経営チームから全ての従業員までもを対象にしています。企業の構成員一人ひとりがビジョンを実現するために「実行」していく、そんな企業づくりのために必要な考え方とツールが詰まった一冊となっています。是非ご一読ください。 企業の文化、規模、業種、業績などにより、仕組みづくりの在り方は大きく異なります。
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