企業のビジョンとは？理念との違いや作り方の5つの手順を紹介！

企業が目指す未来の姿や理念とは何でしょうか。企業のビジョンは、その企業が将来到達したいと望む状態や目指す方向性を示しています。

しかし、ビジョンと似た言葉で「企業理念」がありますが、実はこれらは微妙に異なる概念を持っています。また、個人が持つビジョンと組織全体としてのビジョンも異なる点があります。

さらに、ビジョンだけでなく、「ミッション」と「バリュー」も企業経営において重要な要素です。

これらを持つことで、明確な判断基準の設定や公平な人事評価、目標の浸透、採用時のミスマッチ防止などのメリットが生まれます。

この記事では、これらの概念の違いや意味、そしてミッション、ビジョン、バリューを効果的に組織に取り入れ、浸透させるための手順やそのメリットについて詳しく解説します。

企業が持つべき理念や目指すべき方向性についての理解を深める手助けとなること間違いなしです。

企業ビジョンとは

企業ビジョンは、組織や企業が将来達成したいと望む状態や目標を明示的に表現したものです。これは組織の方向性を示し、組織内外のステークホルダーに対してその目指す先を伝える役割を果たします。

ビジョンは、経営者やリーダーが描く未来の姿であり、そのビジョンに共感し動かされるスタッフや取引先、顧客といった関係者が企業の成功の鍵となります。

企業理念とビジョンの違い

企業理念とビジョンは、ビジネスの世界でよく耳にする言葉ですが、初めてこれらの言葉を聞いた方や、ビジネスの基本を学ぶ過程にある人にとっては、どちらも似たような意味合いのように感じられるかもしれません。しかし、これらは実は異なる要点を持っています。

まず、企業理念について考えてみましょう。

企業理念は、ある組織や会社が持っている、深い信念や基本的な価値観を示しています。これは、会社がどういった考えのもとで活動しているのか、どのような基盤の上に立っているのかを示す指針のようなものです。

例えば、「顧客の成功を第一に考える」という理念は、顧客のために最善を尽くすという考えがその会社の中心にあることを意味します。また、「持続可能な社会の実現に貢献する」という理念は、環境や社会全体のことを考えて、そのような方向性でビジネスを展開していくことを示しています。

次に、ビジョンについて考えてみましょう。

ビジョンは、企業理念よりも具体的な未来の姿を示しています。これは、組織が将来到達したいと思っている状態や、目標を示すものです。

たとえば、「2025年までに業界トップのシェアを獲得する」というビジョンは、その会社が設定した明確な目標を示しています。また、「全製品をエコフレンドリーにする」というビジョンは、環境への配慮を持ちつつ、具体的な製品開発や改善を目指す方向性を示しています。

このように、企業理念とビジョンは確かに関連性がありますが、異なる側面を持っています。

簡潔にまとめると、企業理念はその組織が「なぜ存在するのか」を示すものであり、ビジョンはその組織が「将来何を目指しているのか」を示すものだと言えます。

個人と組織のビジョン

ビジョンという言葉を聞くと、多くの人は企業や大きな組織の文脈で使用されるものとしてイメージするかもしれません。しかし、ビジョンは大小を問わず、個人にも持つことができる大切な概念です。

まず、個人のビジョンについて詳しく考えてみましょう。個人のビジョンは、ある人が自分の人生やキャリアの中でどういった未来を望んでいるか、どういった目標や夢を持っているかを示します。

例を挙げると、””10年後に自分の会社を持つ””というビジョンは、ビジネスの世界で独立し、自らのビジョンを実現するための会社を築き上げることを夢見る人の思いを示しています。また、””世界を旅しながら働く””というビジョンは、場所に縛られずに仕事をする自由なライフスタイルを求める人の希望を表しています。

それに対して、組織のビジョンはもう少し大きなスケールでのものです。組織とは、多くの人々が集まって特定の目的や目標に向かって活動する団体のことを指します。組織のビジョンは、その団体全体がどういった未来を目指しているのか、何を成し遂げたいのかを示すものです。このビジョンは、組織を構成するすべてのメンバーに共有され、一緒に取り組むべき目標として機能します。

個人のビジョンと組織のビジョン、両方とも異なるスケールや範囲でのものであり、それぞれの目的や背景には違いがあります。しかし、どちらのビジョンにも共通しているのは、未来のイメージや目標を明確にし、それを基に現在の行動や決断を方向付けるという重要な役割です。

このビジョンがあることで、人々は自分たちの進むべき道をはっきりと見据え、より意味のある行動へと繋げやすくなります。

企業のミッション・ビジョン・バリューの違いとは

ミッション、ビジョン、バリューは、企業や組織が持つべき基本的な3つの要素として、多くの経営者やリーダーが重視しています。

これらの要素は、組織の方向性を示すものであり、ステークホルダーとの関係や社内のコミュニケーションを強化する上で極めて重要です。

企業におけるミッションの意味とは

ミッションという言葉を解説すると、企業や組織が自らをどのように定義し、どのような役割を果たすべきだと考えているかを示す基本的な考え方や哲学を表しています。

一言で言えば、企業や組織が「なぜここに存在しているのか？」という非常に根本的な問いに答えるものです。

この問いに対する答えは、組織や企業が持っている深い信念や価値観、そしてその組織や企業が果たすべきと考える社会的な役割を反映しています。

例えば、ある食品企業が「健康で豊かな生活を提供する」というミッションを掲げている場合、それはその企業が消費者に健康的な食品を提供することで、より良い生活を実現する手助けをしたいという強い意志や考えを持っていることを示しています。

このように、ミッションは企業や組織の活動やサービス、製品がどのような価値を持ち、それが社会や顧客にどういった利益や貢献をもたらすのかを示す基盤となる考え方です。

そして、そのミッションに基づいて具体的な活動や戦略が展開され、組織全体の方向性が定められます。ミッションは、組織や企業が持つ核心的な価値観を明確にし、その活動の方向性を示す非常に重要な要素と言えるでしょう。

企業におけるビジョンの意味とは

ビジョンという言葉は、企業や組織が未来においてどこを目指しているのか、つまりその理想の姿や希望する未来の形を表現するものです。ビジョンは単なる願望ではありません。

それは組織や企業が実際に達成を目指す明確な方向性を示しており、その存在によって関係者は目の前の課題や挑戦に対しても前向きに取り組むモチベーションや意欲を持ち続けられます。

たとえば、ある企業が「2030年までにアジアでトップの市場シェアを持つ」というビジョンを掲げている場合、単に売り上げを増やすという抽象的な目標ではなく、具体的な時期と地域を定めた明確な目標を示しています。このように具体的なビジョンを持つことで、組織内のすべての人が同じ方向を向き、その目標に向かって連携して取り組めるようになります。

さらに、ビジョンは組織の戦略や方針を策定する際の大きな基盤となります。この明確な未来のイメージがあることで、組織はどのような戦略や手段を用いてそのビジョンに到達するのか、どのようなリソースや人材を活用するのかといった点について具体的に考えられるようになるのです。

このように、ビジョンは企業や組織の将来の成功への道筋を描き、それを追求するための活動や意識を統一する非常に重要な役割を果たしています。

企業におけるバリューの意味とは

バリュー、あるいはコアバリューという言葉は、企業や組織の骨格とも言える部分、つまりその組織の心臓部に位置する考え方や価値観を表現する言葉です。

これは単に企業の方針やビジョンを示すものではなく、その組織の日常の行動や意思決定、さらには対外的なコミュニケーションにおいても浸透している基本的な原則や信条を示しています。

これらのバリューは組織のメンバーが日々の業務を行う際の指針となり、同時に外部のステークホルダー、たとえば取引先や顧客などに対して、その組織が何を大切にし、どのような行動を取るべきと考えているのかを伝える役割も果たしています。

簡単に言えば、バリューはその組織のDNAのようなもので、それに基づいて組織全体の行動や考え方が形成されます。

たとえば、「誠実性」をバリューとして掲げる組織は、その全ての活動やコミュニケーションにおいて誠実さを大切にします。それは顧客への約束を守ること、取引先との公正な取引を行うこと、または社内のコミュニケーションにおいてもオープンで正直な態度を持つことなど、様々な形で表れるでしょう。

同様に、「革新性」や「顧客第一」などのバリューも、それぞれの組織で具体的な行動や方針として具現化され、その組織のアイデンティティやブランドを形成していくのです。

ミッション・ビジョン・バリューが企業に必要な理由

ミッション・ビジョン・バリューが、企業に必要な理由を詳しく解説します。

理由（1）明確な判断基準の設定

ビジネスの世界は、技術の進化、消費者のニーズの変化、経済の動向など、様々な要因によって絶えず動いています。このような流動的な状況の中で企業が存続し繁栄するためには、日々の運営において数多くの決断を迅速に、かつ適切に下すことが求められます。

このとき、企業の指針となるのが「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の三つの要素です。

ミッションは、企業が存在する理由やその役割を示すものです。これにより、企業がどのような価値を提供し、社会にどのように貢献していくのかの基本的な考え方が示されます。

ビジョンは、企業が将来どのような状態を目指しているのか、つまり未来の目標や夢を示します。

バリューは、その企業がどのような価値観や信念を持ち、どのような行動基準を重視しているのかを示す基本的な原則です。

これら三つの要素が明確であると、企業は日常の業務や突発的な問題に対しても、その基準に沿った判断を行うことができます。例えば、短期的な利益を追求するチャンスがあるときでも、それが長期的なビジョンやミッション、または企業のバリューに合致していない場合は、そのチャンスを見送る判断を下すことができるのです。

このように、ミッション・ビジョン・バリューは企業の羅針盤のような存在となり、安定した方向性を持って適切な意思決定をサポートします。それによって、企業は短期的な誘惑に流されることなく、持続的な成長と繁栄を目指す道に進んで行けるのです。

理由（2）公平な人事評価の実施

企業の中で、人事評価は非常に重要な役割を果たしています。それは、従業員の努力や成果を評価し、報酬や昇進の判断を下すための基準となるからです。

しかし、単に売上や業績だけを評価の基準とすると、企業の長期的な目標や文化、価値観といった大切な要素が見過ごされることがあります。ここで「バリュー」の考え方が重要となってきます。

企業の核となる価値観や信条の評価基準への取り入れは、多くのメリットをもたらします。

まず、公平性が高まる点です。業績だけを見ると、短期的な結果を出した人が評価されやすくなりますが、バリューを基にした評価では、企業の長期的な方向性や文化に合った行動が評価されます。これにより、単なる結果だけでなく、その背景にある行動や思考、姿勢なども考慮されるため、より公平な評価が期待できます。

さらに、バリューを評価基準にすることで、組織全体としての一貫した文化や価値観の共有が促進されます。従業員がその価値観や文化に基づいた行動が評価されるため、自然とそれに従った行動に繋がるのです。これにより、組織内での共通の理解や信念が育まれ、組織の一体感や連携が強化されるでしょう。

結果として、バリューを基にした人事評価の基準は、企業の長期的な成功や従業員の満足度向上に寄与する大切なステップと言えるでしょう。

理由（3）目標の浸透

ビジョンやミッションは、組織や企業の「なぜ存在するのか」や「これからどこを目指すのか」といった核心的な疑問への答えとなるものです。これらを明確にし、それを組織全体で共有することは、多くの利点を持っています。

まず、明確なビジョンやミッションがあると、それぞれの従業員は日々の業務の中で何を目指して行動すれば良いのか、どのような取り組みが求められているのかがはっきりと理解できます。

例えば、ある企業が「世界で最も信頼されるサービスを提供する」というビジョンを掲げていた場合、その企業の従業員は顧客へのサービス提供の際に、常に「信頼性」を意識した行動が求められるでしょう。

さらに、このようなビジョンやミッションを組織全体で共有することで、全員が同じ方向を向いて取り組むことが可能となります。これは、チームとしての連携を深め、各部署や職種間の協力を促進する効果があります。また、共通の目標に向かって努力することで、自然と組織の中での一体感も高まるでしょう。人は一緒に何かを達成することで、強い絆や連帯感を感じるものです。

そして、全員が同じ目標を共有し、それに向かって一丸となって取り組むことで、組織としての業績も向上する可能性が高まります。共通の目的意識のもと、効率的かつ効果的に業務を進められるため、結果として業績のアップが期待できるのです。

ビジョンやミッションを組織全体で共有することは、組織の発展や成功に向けた大切なステップであり、その実現によって多くのポジティブな変化をもたらせられるでしょう。

理由（4）採用時のミスマッチ防止

企業が明確なミッション、ビジョン、バリューを持つことの意義は非常に深く、これは組織の成功にも直結しています。まず、これらの要素を理解すると、ミッションは企業の存在意義や目的を示し、ビジョンは企業が将来到達したい目標や状態を表現し、そしてバリューはその企業の中心的な価値観や信念を示すものとなります。

求職者が就職活動を行う際、企業の情報を収集する中で、このようなミッションやビジョン、バリューを知ることは非常に有益です。なぜなら、これによってその企業がどのような価値観を持っているのか、どのような方向性を目指しているのかが明確になり、自分の価値観やキャリアのビジョンと合致する企業を選ぶ手助けとなるからです。

企業側から見ると、明確なミッション・ビジョン・バリューを持つことで、求職者に対して自社の魅力や方向性を効果的に伝えられます。これが結果として、企業の文化や価値観に合致した人材を引き寄せる力となります。逆に言うと、明確な方向性や価値観が伝わらない企業は、求職者が何を基準に選ぶべきか迷ってしまう可能性が高くなります。

そして、企業の文化や価値観に合致した人材の採用は、長期的な組織の安定性や生産性の向上に寄与します。

一方、価値観や方向性が合致しない人材が採用には、組織内での摩擦やコミュニケーションの障壁が生じがちです。また、ミスマッチが生じると、早期退職のリスクも上昇し、企業にとっても新たな人材の採用や育成のコストとなってしまいます。

したがって、明確なミッション・ビジョン・バリューを持ち、それを適切に伝えることは、企業が持続的な成長と成功を追求する上で、非常に重要な要素となるのです。

企業のミッション・ビジョン・バリューの作り方

企業のミッション、ビジョン、バリューの策定は、組織の核となる存在意義や方向性、価値観を明示する重要なプロセスです。適切なミッション・ビジョン・バリューを設定するための方法について、以下で詳しく解説します。

企業のミッションの作り方

企業や組織において、その存在意義や役割を明確にすることは非常に重要です。この存在意義を特定するというのは、要するに「私たちはなぜこの世に存在しているのか？」という深い問いに答えを出すプロセスを指します。

例えば、ある企業は単に利益を追求するために存在しているのではなく、特定の社会的価値を提供するため、あるいはある特定の問題を解決するために存在しているかもしれません。このように、自分たちの真の目的や存在の意味を明確にすることで、企業の方向性や目標がはっきりとし、その方向に向かって進む動機やエネルギーが生まれます。

次に、ステークホルダーの意見の収集です。ステークホルダーとは、企業の活動に関わりを持つ、またはその影響を受けるさまざまなグループや個人のことを指します。これには、従業員、顧客、取引先、そして時には地域社会や環境なども含まれます。

これらのステークホルダーからの意見やフィードバックの積極的な収集によって、企業がどのような価値を持っているのか、またどのような期待を持たれているのかを理解することができます。そして、これらの意見をもとに、企業のミッションや目的を考える際の参考になるのです。

最後に、簡潔性についてです。ミッションとは、企業が追求する目的や方向性を示す文言のことを言いますが、このミッションは簡潔でわかりやすいものであるべきです。複雑で長すぎると、人々がそれを覚えたり、共有したりすることが難しくなってしまいます。

一方で、簡潔でわかりやすい言葉で表現されたミッションは、誰もがすぐに理解し、それに共感することができます。このように、ミッションは全てのステークホルダーが共有し、行動の指針として活用できるように、簡潔で明瞭なものであるべきです。

企業のビジョンの作り方

企業や組織の成長や発展において、どこを目指していくのか、その方向性を示す「将来の展望」は極めて大切です。具体的には、5年後や10年後の将来において、自社がどのような位置にあり、どのような活動や業績を達成しているのか、その理想的な姿をはっきりと描くことから始めます。

このビジョンを持つことで、どのような戦略や取り組みが必要か、またどの方向に進めばよいかが明確になります。

次に、「具体的な目標の設定」です。将来の展望だけではあいまいで、日々の業務や取り組みにどのように繋がるのかが不明確になりがちです。

そこで、具体的な数値目標や達成すべき成果を設定することで、具体的な方向性や進めるべきステップが見えてきます。例えば、「5年後には売上を2倍にする」といった数値目標や、「新しい市場でトップシェアを獲得する」といった成果目標を設定することが考えられます。

そして、最も重要なのは「共感の喚起」です。ビジョンや目標は、企業の経営者やリーダーだけのものではなく、従業員やステークホルダー全員が共に目指すべきものです。そのため、ビジョンや目標を伝える際には、ただ事実を述べるだけでなく、感動や興奮を呼び起こすような表現を用いて、その大切さや魅力を伝えることが求められます。

これによって、従業員やステークホルダーがビジョンや目標に共感し、一緒に達成するための活動や取り組みに意欲的に取り組めるようになります。

企業のバリューの作り方

企業や組織の中には、その組織ならではの価値観や特色が存在します。まず、「組織の特色の特定」というステップでは、その企業が何を最も大切にしているのか、またその企業だからこそ持っている独自の特徴や強みは何かを明らかにします。

これは、他の競合企業や組織とは何が異なるのか、自社のアイデンティティや魅力を理解するための大切なステップです。この際には、企業の歴史や過去の成功体験、顧客からのフィードバックなどを参考にしながら、その独自性や明確な価値観が求められます。

次に、「従業員の参加」の重要性です。組織や企業の価値観やバリューを策定する際、トップダウンで上から一方的に決めるのではなく、従業員一人ひとりの意見や考えを取り入れることが大切です。なぜなら、従業員自身がその価値観に共感し、自らのものとして受け入れることができるからです。従業員の声を取り入れることで、組織全体として共有される真の価値観の形成が可能です。

そして、最後に「実践の強調」についてです。バリューや価値観は、単に言葉として掲げるだけでなく、日常の業務や組織の中での行動や判断において実際に生かされ、実践されるべきものです。例えば、「顧客第一」という価値観を持っている企業であれば、その価値観が具体的なサービスの提供や製品の品質、従業員の対応など、日々の業務のあらゆる場面で実際に体現されるべきです。

このように、バリューや価値観を実際の行動や判断に反映させることで、組織としての信頼やブランド価値を高められるわけです。

企業ビジョンを掲げるメリット

企業ビジョンは、組織が将来到達したい姿や目指す方向性を示すものです。明確なビジョンを持つことは、企業にとって多くのメリットをもたらします。

以下で、企業ビジョンを掲げるメリットについて詳しく説明します。

メリット（1）社員モチベーションの向上

ビジョンとは、企業や組織が将来到達しようとしている理想の姿や目標を示すものです。これを持つことの重要性について深く探ると、非常に興味深い側面が見えてきます。ビジョンが明確に伝えられている組織では、社員一人ひとりがそのビジョンに照らし合わせて「私たちはこの大きな目的のために今日も努力しているのだ」という意識を持つことができます。

例えば、ある企業のビジョンが「2030年までに世界中の家庭に安全で環境に優しい製品を届ける」としている場合、その企業の社員は、自らの業務を通じてこの目標にどれだけ近づけるか、日々考えることになります。

このように、ビジョンが明確であれば、日常の細かなタスクや業務も、その大きな目的に貢献しているものとして捉えられます。これによって、単にタスクをこなすだけの仕事ではなく、より大きな意義や目的を持った業務として認識することが可能となります。そして、それは社員のモチベーションの向上に直結します。

人は何か大きな目標や理想に向かって努力することで、達成感や満足感を得られる生き物です。だから、明確なビジョンが存在することで、社員は一体感を感じ、共通の目標に向かって熱意をもって取り組められるのです。

メリット（2）社内の意見をやすくなる

ビジョンというのは、一言で言えば企業や組織が将来到達したい「理想の姿」のことを指します。ビジョンを持つことの真の価値を理解するためには、船の航海に例えて考えてみると良いでしょう。船が目的地なくただ漂っていたら、乗組員たちはどの方向に舵を取れば良いのか、何を目指して進めば良いのかが分かりません。しかし、明確な目的地や到達点があれば、その方向に向かって進むべきかがはっきりします。

このように、ビジョンが明確であれば、それに基づいた方針や戦略を決める際の基準となり、組織内での意思疎通がスムーズになります。たとえば、企業のビジョンが「最高品質の商品を世界中の人々に提供する」とした場合、新しい商品を開発する際やマーケティング戦略を考える際に、このビジョンを軸にした決定が行われるでしょう。

更に、明確なビジョンが共有されることで、組織内のさまざまな部門やメンバー間で意見や考えが一致する可能性が高まります。異なる背景や専門知識を持つメンバーが多数いる大きな組織では、特にこの点が重要です。ビジョンが共有されていることで、全員が同じ目的地に向かって進んで行けます。

この一致した方向性があることにより、組織全体のエネルギーが一つの方向に集中し、より効果的に目標に向かって進めることが可能となります。

メリット（3）社員の行動指針となる

ビジョンというのは、企業や組織が将来どうなっていたいか、どのような地位や価値を持ちたいかという「理想の姿」を示すものです。このビジョンは、ただの飾り文句やスローガンではなく、組織のメンバー全員が日常の業務を行う際の大切な指南役となります。

例えば、ある企業のビジョンが「全ての人々に健康と幸福をもたらす」だとしましょう。社員が新しい商品の開発やサービスの改善に取り組む際に、どのような方向性を持つべきか迷ったとき、このビジョンが役立ちます。

具体的には、提供する商品やサービスが「健康と幸福」に寄与するものであるかどうかを基準として選択や判断を行えるのです。

また、ビジネスの世界は常に変動しており、日々さまざまな選択や判断を迫られる状況が続きます。そういった時に、どの業務を優先して進めるべきか、どの取引先との関係を深めるべきかなどの決断をする際にも、ビジョンは非常に有用です。

ビジョンを持つことで、目の前の小さな課題や問題だけでなく、長期的な視点での最適な選択を行う手助けとなり、組織全体の方向性を保てます。このように、ビジョンは社員一人一人の日常の業務や意思決定の中での「コンパス」として機能し、迷いや不確実性の中での指針となるのです。

メリット（4）既存の習慣の変革

企業や組織は、長い歴史を持っている場合、その中で培われてきた多くの習慣や考え方が根付いています。これらは、過去の成功体験から生まれたものであったり、組織の文化の一部として受け継がれてきたものであることが多いです。

しかしながら、組織の環境や業界の状況、技術の進化など、外部からの様々な変化に対応するためには、これらの古い習慣や固定した考え方が障害となることも少なくありません。

このような状況で、ビジョンを明確に掲げることは、組織の新しい方向性を示す大切なステップとなります。ビジョンは、企業が将来到達したい理想の姿や目指すべき大きな目標を示すものです。このビジョンがあることで、組織全体に「我々はこのような未来を目指している」という意識を持たせられます。

さらに、ビジョンが示す新しい方向性や目標は、従来の習慣や考え方に縛られず、新しいアイデアや方法を取り入れる必要性を感じさせられます。従って、ビジョンは、組織内部の古い習慣や固定概念に挑戦するキッカケとなり、変革や革新の動力として機能するのです。

結果として、ビジョンを掲げることで、組織はより柔軟な思考を持ち、時代の変化や新しいチャレンジに対応するための新しい方法や手法の導入が容易になるでしょう。

ビジョンを社員に浸透させるための手順

ビジョンが社員に浸透していないと、その真の価値は発揮されません。以下に、ビジョンを組織内で浸透させるための手順を解説します。

手順（1）ビジョンの理解を促す

企業が新しいビジョンを採用する際、それを成功させるための一つの鍵は、すべての社員がそのビジョンの内容をしっかりと理解し、共有することです。ビジョンが組織内できちんと浸透していないと、そのビジョンに基づいた組織全体の行動や意思決定が難しくなります。

そのために、まず初めに実施するべきことは、ビジョンの内容を社員全員に伝え、正確に理解してもらうことです。その際に効果的な方法として、いくつかの方法が考えられます。

一つ目の方法として、「説明会の開催」が挙げられます。この説明会では、経営層が直接登壇し、新しいビジョンの意味や背景、それに対する経営層の考えや意図を、社員に向けて具体的に説明します。経営層から直接情報を聞くことで、社員はビジョンの重要性や会社の方針を強く感じることができるでしょう。

二つ目の方法は、「資料の配布」です。ビジョンを詳しく解説した資料やパンフレットを作成し、それを社員全員に配布することで、社員一人一人が自分のペースでビジョンを理解することが可能となります。資料には、ビジョンの具体的な内容だけでなく、それを採用する背景や意図、そしてそれに基づく具体的な行動指針などが記載されていると、より理解が深まるでしょう。

最後に、「Q&Aセッション」を設けることも非常に効果的です。新しいビジョンには、社員からさまざまな疑問や質問が生まれることが予想されます。Q&Aセッションを通じて、これらの疑問や質問に答えることで、社員の不安や疑念を解消し、ビジョンへの理解を深められます。

これらの方法を組み合わせて実施することで、ビジョンが組織内でしっかりと浸透し、社員全員が一致団結して目標に向かって取り組む土壌作りが可能となるのでしょう。

手順（2）ビジョンへの共感を持ってもらう

ビジョンを企業の成長のための指針として採用する際、それを単に知ってもらうだけでは十分ではありません。大切なのは、社員がそのビジョンを自分のものとして受け入れ、深く共感し、日常業務の中での行動や判断の基準として活用することです。

まず、「成功事例の共有」が非常に効果的な手法です。人は、具体的な事例や実績を通じて、抽象的なビジョンの価値や意義を理解しやすくなります。ビジョンに基づいて行われた活動や取り組みが実際にどのような成果を生んだのか、その成功事例を社員全員と共有することで、ビジョンの重要性や実現可能性を実感できるようになります。

これによって、社員はビジョンにより一層の信頼を持ち、それを業務に取り入れる動機付けとなります。

次に、「関連ワークショップの実施」も効果的な手法の一つです。ワークショップやディスカッションを通じて、社員自らがビジョンに関連するテーマについて議論したり、深く考える機会を持つことで、ビジョンをより深く、実感して理解できます。

実際に手を動かして考えることで、ビジョンとの関連性やその実現に向けた方策などが見えてくるため、ただ聞くだけよりも理解が深まるでしょう。

さらに、「フィードバックの収集」は、ビジョン浸透の取り組みを進める上での非常に大切なステップです。社員からの意見や感想を収集することで、ビジョンに対する理解度や疑問点、さらなる提案などが明確になります。このフィードバックを基に、企業はビジョンの伝え方や取り組みの方向性を見直し、より効果的な浸透活動を行えます。

これらの取り組みを通じて、ビジョンを単なる言葉やフレーズとしてではなく、組織の行動や文化の核心部分として定着させることが可能となります。

手順（3）ビジョンの具体化と実践を行う

ビジョンとは、企業や組織が将来に向けて達成したいと考えている理想的な姿や目標のことを指します。しかし、ビジョンを掲げるだけでなく、それを実際の業務に取り入れ、実現に向けて具体的な行動を起こすことが非常に重要です。

こうした取り組みを実践することで、ビジョンは単なる抽象的な概念から、組織の行動や成果として現れるものへと変わっていきます。

まず、「KPIや目標の設定」という手法があります。KPIとは、Key Performance Indicatorの略で、業務成果を数値化した指標のことを言います。ビジョン達成のための具体的なKPIや目標を設定することで、日常業務の中で何を重視し、どのような成果を目指すべきかが明確になります。

これにより、社員一人一人が自分の業務をどのように進めればビジョンに寄与できるのかを具体的に理解し、その追求が可能となります。

次に、「ビジョンに関連するプロジェクトの立ち上げ」という方法が考えられます。ビジョン実現に向けて新しいプロジェクトや取り組みを始めることで、そのビジョンが具体的な形で現れ始めます。

例えば、環境に優しい企業を目指すというビジョンがある場合、リサイクルプロジェクトやエコ商品の開発などの新しい取り組みをスタートさせることで、そのビジョンに近づいていけるでしょう。

また、定期的に行う「振り返りの機会の設定」も大切です。この振り返りを通じて、ビジョンに沿った活動の進捗や成果を確認することができます。これにより、どの部分が順調に進んでいるのか、どの部分で改善や新たな取り組みが必要なのかを明確にし、次のステップや方針の検討が可能になります。

これらの具体的な取り組みを通じて、ビジョンは実際の業務の中で生き生きとしたものとなり、組織全体が一丸となってその実現に努められるようになるのです。

企業のビジョン作りにおける注意点

最後に、企業のビジョン作りにおける注意点を紹介します。

注意点（1）変化することを考えて作る

現代は、Volatility（変動性）、Uncertainty（不確実性）、Complexity（複雑性）、Ambiguity（曖昧性）をキーワードとするVUCAの時代といわれています。ビジョン作成時に予想した未来や市場、顧客のニーズが常に変わらないモノとは限りません。

したがって、常に振り返りをし再構築する必要があります。策定にあたっての背景や現在に至るまでの経営トピック等を一度整理して、振り返っておくことが重要です。

注意点（2）実現可能なものにする

高邁なビジョンを掲げても、夢物語で終わってしまうと、ステイクホルダーの賛同は得られません。この不確実性の高い時代だからこそ、実現性のあるものを意識して作る事が大事となります。

注意点（3）シンプルなものにする

難解な言葉や専門的な用語、読む人によって解釈が変わってしまう様な用語を可能な限り避けましょう。企業のビジョンは誰でも理解できるようなものにする必要があります。

EOSの考える理想的な企業のビジョンとは

EOSの考え方に基づく、企業ビジョンのあり方について紹介します。

ビジョンは機能しなくては意味がない

実際に機能するビジョンはシンプルなものです。例えば、経営戦略を何ページにもわたってまとめてみてもその戦略が機能するとは言えません。ビジョンの作り方のステップでも紹介した通り、実際にビジョンが会社に浸透しなければビジョンを作り上げたところで意味がありません。

では、このような実際に機能するビジョンはどのように作ればよいのでしょうか。

そこで、今回はビジョン・トラクションシートを紹介します。

EOS®（the Entrepreneurial Operating System®）は企業のビジョンは機能するものでないと意味がないと考え、「ビジョン・トラクションシート」を作成しました。以下の8つの項目に答えるだけでビジョンを構築することが可能です。

1. コアバリュー＝「あなたたちは誰ですか？、どんな価値観を持った集まりなんですか？」
2. コアフォーカス＝「御社の戦場はどこですか？、どこでなんのために戦っているのですか？」
3. 10年目標＝「御社はどこへ向かっているのですか？（長期目線）」
4. マーケティング戦略＝「上の10年目標に対してどういう手段でたどり着くんですか？」
5. 3年イメージ＝「企業のちょっと未来を想像する。」
6. 1年計画＝「3年イメージ達成のために今年中に必要なことは？」
7. 石=「人間が集中できる90日間に必ず達成すること」
8. 課題リスト＝「1~7を進める上で浮き上がった問題点」

経営チームの構築でモチベーティブな会社を作る

企業のビジョンは社長が1人で作るべきではありません。なぜなら、社長一人では、各市場や分野に全て精通することができないからです。

経営チームを組む際は、以下の3点に該当する人を探す必要があります。

• 業務の内容や重要性と必然性について理解できること
• 仕事に対しての情熱が有ること
• 仕事の遂行能力が有ること

そのため、フロント、ミドル、バックオフィスの各部門の部長クラスでチームで制作する必要が生まれます。

このように、経営チームを作ることは、ビジョン作りのためだけに限らず、社員が経営に「参加」できるという満足感とモチベーションの維持にもつながります。

まとめ

企業のビジョンは、その未来の姿や存在する根本的な理由を明示するもので、組織の方向性や目的を示す重要な要素です。しかし、あなたも、ビジョンを持ちながら実際の業務や日常にどう取り入れて良いのか、どう実現していくのかという悩みを持っているかもしれません。そこで、EOSの存在が非常に役立ちます。

現状、あなたの企業はどのような課題や挑戦に直面していますか？

ビジョンの実現に向けての方向性がバラバラで、一致しないことはありませんか？あるいは、ビジョンがあまりにも抽象的で、それを具体的な行動に変換するのが難しいと感じていませんか？

EOSは、ビジョンを現実のものとして実現するための具体的なシステムやフレームワークを提供するものです。実際に多くの企業がEOSを導入し、ビジョンを具体的な行動やタスクに変換し、その実現に向けて組織全体の方向性を一致させる成果を得ています。

成功事例も多数存在します。実際に、EOSは、世界中の多くの企業で導入されています。これらの事例を通じて、EOSの有効性やその実用性を感じていただけることでしょう。

さらに、あなたの企業の独自のビジョンや文化、課題に合わせて、EOSの導入プランをカスタマイズすることも可能です。そして、EOSの導入から実践、継続的なサポートまで、一貫して支援します。定期的にビジョンの実現に向けた進捗や成果を評価し、必要に応じて調整することで、ビジョンの実現を効果的にサポートします。

ビジョンの実現を真剣に考え、次のステップを踏み出したい方は、EOSの導入をぜひご検討ください。