ビジョンという言葉を耳にすることは多いでしょう。しかし、そのビジョンが実際に社員にどれほど伝わっているのか、そして実際の業務や行動に反映されているのかは、意外と見落とされがちな部分です。
ビジョンは、単なる企業のスローガンや目標ではありません。ビジョンは企業の核心的な価値観や方向性を示すものであり、その重要性を理解し、浸透させることで多くのメリットが生まれます。社員の行動が主体的になる、優秀な人材の獲得や維持が容易になる、外部からの信頼が向上するなど、企業全体の発展に寄与します。
この記事では、ビジョンの定義から、その浸透の重要性、そして具体的な浸透させるための施策までを詳しく解説します。ビジョンが社員にしっかりと伝わり、その結果として企業がさらに成長するためにできることを一緒に考えてみましょう。
ビジョンを作っただけで満足していませんか?
会社の目標を達成するために「ビジョン」を策定したものの、作って終わりになってはいけません。しかし、残念ながら多くの従業員は、経営者の掲げる「ビジョン」を理解していません。
故にビジョンは達成されずに終わってしまうのです。ここで「ビジョンが浸透しない」企業の典型例をいくつか紹介しましょう。
- ビジョンをつくることがゴールになっている
- そもそも社長がビジョンを把握しないままに発信されている
- ビジョンが壮大すぎて「借り物」である
- ビジョンの分量が多すぎて実効性に乏しい
- 「目的地」は明確だが「行き方」が不明瞭で浸透しない
- ビジョンを浸透させるためのアクションがない(HPに掲載しているだけ)
- ビジョンに整合性がないため経営陣と管理職の「言うこと」が異なる
1つでも該当する項目があれば、ビジョンそのものを再検討する余地があると言えるでしょう。企業の「トラクション(実行力)」の実装は、ビジョンの共有から始まるからです。
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EOSが定義するビジョンとは
ビジョン、ミッション、バリュー、ウェイ、経営理念、クレド、スピリット等、自社の目指す将来像や価値基準を示すものは様々です。EOSが定義する「ビジョン」とは、シンプルに会社が進むべき方向性のことです。一般的には「ミッション」「ビジョン」「バリュー」は別個に解釈されることが多いですが、EOSの考え方では、「ミッション」も「バリュー」も「ビジョン」に包含されます。
ビジョンは組織体に機能しなければ何の価値もありません。機能するビジョンには、会社の「現在地」「目的地」「道のり」が明確に示されています。ここで言う「道のり」とは、たとえば「どういうペースで3年後の目標に進んでいくのか?」「3年後、1年後の目標を達成するための“四半期目標”が明文化されているか?」という具体的なプロセスを意味します。
従って、「1行だけ」のビジョンは、目的地が簡潔なビジョンとは言えますが「どのようにそこまで行くか」という道のり部分が不明瞭であり、不完全と言わざるを得ません。
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そもそもビジョンとは?
ビジョンという言葉は経営戦略や組織運営の中で頻繁に取り上げられます。しかし、その意味や重要性について十分に理解している人は案外少ないかもしれません。ここではビジョンの定義と、企業がそれを打ち出す目的について紹介します。
ビジョンの定義
ビジョンという言葉を聞いたことがありますか?企業におけるビジョンは非常に重要な考え方で、特に組織や企業の運営において中心的な役割を果たしています。
ビジョンとは、わかりやすく言うと組織や企業が未来においてどのような姿や状態になりたいか、どんな目標を持っているかを示す言葉です。このビジョンは、単に「来年の売上を〇〇にしたい」という短期的な目標や数字だけを示すものではありません。
ビジョンはもっと広い視野で、将来的にどのような組織や企業に成長したいか、そしてそのためにはどのような行動や姿勢が必要かを示しています。このビジョンには、その組織や企業の深い価値観や信条、哲学がしっかりと込められていることが多いのです。
例えば、「持続可能な社会の実現を目指す」というビジョンは、環境や社会にやさしい活動を続けるという意味合いが強く含まれています。また、「世界中の人々の生活を豊かにする」というビジョンは、多くの人々の生活の質を高める商品やサービスを提供することの重要性を強調しています。
これらのビジョンが組織内で共有されると、仕事の方向性が明確になり、日々の業務の中での判断基準や行動指針として機能します。従業員一人一人がこのビジョンを胸に刻むことで、組織全体が一つの方向へと向かう力を持つようになります。さらに、このような強いビジョンがあると、従業員の意欲やモチベーションが高まり、組織の文化や雰囲気もより前向きで協力的なものに変わっていくことが期待されます。
企業がビジョンを打ち出す目的
ビジョンという言葉は、企業や組織の成長や進行方向を示すものとして非常に重要です。しかし、具体的にビジョンがどのような役割を果たすのか、なぜそれが必要なのかを理解することは、ちょっとわかりにくいですよね。そこで、ここではその点を深く掘り下げて、ビジョンの重要性を詳しく解説してみたいと思います。
まず、ビジョンは企業の「方向性の提供」において中心的な役割を果たします。航海中の船がコンパスを頼りに正しい方向へ進むように、企業もビジョンを持つことで目指すべき方向が明確になるということを意味します。
例えば、日常の業務の中で複数の課題や選択肢に直面した時、どの方向に進めばいいのか迷うことがあるでしょう。そんな時、ビジョンがあればそれを基に正しい道を見つける手助けとなります。
次に、ビジョンは「モチベーションの向上」にも繋がります。従業員が共通の目標や理念に向かって努力することは、その組織の一体感やモチベーションを大きく高める要因となるのです。ビジョンは、その大きな目標や理想を示すものとして、組織全体のエネルギーを一つの方向に集中させる役割を果たします。
さらに、ビジョンは「意思決定の基準」としても機能します。企業活動は数多くの選択と決断の連続ですが、その中で最も企業のビジョンや価値観に合った選択をすることが、結果的に企業の成功に繋がるのです。ビジョンは、そのような日々の選択や決断の際の大切な指針として期待されるのです。
最後に、ビジョンは「外部とのコミュニケーション」のツールとしても非常に効果的です。企業がどのような価値観を持ち、どんな目標を追い求めているのかを顧客や取引先、投資家などに伝えるために、ビジョンは極めて有効なメッセージとなります。これによって、企業のブランドイメージや信頼性の向上にも寄与します。
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企業においてビジョンの浸透が重要な理由
ビジョンとは、企業が未来に向かって目指す姿や理想を示すものでしたね。このビジョンが企業内部でしっかりと浸透しているかどうかは、その企業の成長や競争力に直結しています。ここでは、ビジョンの浸透が企業にとってなぜ重要なのか、その理由を詳しく探っていきましょう。
主体的に行動する社員が増えること
ビジョンは、企業の「夢」や「理想」とも言えるもので、その方向性を示す大切な指標となります。では、このビジョンが企業内でしっかりと浸透、つまり多くの社員がそのビジョンを知り、理解し、共有している状態ではどうなるのでしょうか。
まず、ビジョンが浸透している企業では、社員が働く意義や目的を明確に捉えることができます。社員は企業がどのような目的のために存在し、何を大切にしているのかを知っています。このような理解のもと、社員は業務において何をすべきか、また、どのように行動するのが企業のビジョンに合致しているのかがわかります。
例えば、ある企業のビジョンが「持続可能な社会の実現」という場合、社員は日常の業務を行う際、環境への影響を最小限にするような方法を選ぶことが自然となるでしょう。また、新しいプロジェクトや提案を行う際にも、そのビジョンに基づいてアイデアを練るため、結果的にクリエイティビティが向上する可能性があります。
さらに、ビジョンが浸透することで社員は自分自身の役割や責任を明確に認識するようになります。これは、社員が自ら考え、主体的に行動するための大きなモチベーションとなります。例えば、与えられたタスクだけをこなすのではなく、ビジョンを実現するための新しい方法やアプローチを自ら考え、提案するような行動が増えるでしょう。
このように、ビジョンの浸透は社員の行動や意識を大きく変える力を持っており、企業全体の業務の効率や品質を大きく向上させる要因となるのです。
優秀な人材を維持・確保できる
優秀な人材というのは、単純に技術やスキルが高いだけの人を指すのではありません。彼らは仕事に対する熱意や情熱を持っており、単に仕事をこなすだけでなく、自分自身の人生やキャリアにどんな意味や価値を見いだしているのかをしっかりと考えています。
例えば、社会にどのような価値をもたらしたいのか、また、自分自身が成し遂げたい大きな目標は何かなど、深く自分と向き合いながら生きているのです。
このような優秀な人材が求めるのは、ただの高給や豪華な福利厚生だけではありません。彼らは自らの価値観や理想を実現するための場所を求めています。そこで、企業のビジョンが非常に重要な役割を果たすのです。ビジョンとは、企業が目指す未来の姿やそのための価値観を示すものです。
ビジョンが明確で、それが高い理念や目標に基づいている企業は、優秀な人材にとって非常に魅力的な場所となるでしょう。ビジョンが明確な企業では自らの価値観や目標を追求しながら働くことができるからです。つまり社員がそのように自らの価値を感じながら働いてくれる環境を持っている企業では社員満足度が上がりやすく、優秀な人材を引き寄せやすくなります。
また、企業内にすでに在籍している優秀な社員たちも、企業のビジョンに共感することで、より一層のモチベーションや情熱を持って仕事に取り組むようになります。彼らはそのビジョンのもとで自分たちの仕事が社会や世界にどのような影響を与えるのかを感じることができるので、企業に長く留まりたいと感じるでしょう。このように、明確なビジョンを持つ企業は、優秀な人材を引き寄せるだけでなく、その人材を長期間維持するための魅力的な環境を社員のために準備することができるのです。
企業の社外評価が向上する
企業のビジョンというものは、一言で言えばその企業の「夢」や「目指す未来の姿」を示すものです。しかし、このビジョンが示すものは、企業の内部のみならず、外部のさまざまな関係者、いわゆる「ステークホルダー」に対しても非常に大きな意味を持っています。
ステークホルダーとは、企業の活動に関心を持つ、またはその影響を受けるすべての人々や組織のことです。これには取引先、顧客、投資家はもちろん、地域社会や従業員、さらには環境なども含まれることがあります。このステークホルダーたちは、企業との関わりの中でその企業の価値観や方向性、つまり「ビジョン」を強く意識することが多いです。
例えば、取引先や顧客は、ビジョンを通じてその企業がどのような価値を重視し、どのような方針で事業を進めていくのかを知ることができます。明確なビジョンを持ち、それを実践している企業は、取引先や顧客との関係性をより強化させる上で信頼感を築きやすくなります。また、投資家にとっても、企業のビジョンは非常に重要です。彼らはそのビジョンを基に、企業の将来的な成長性や安定性、さらには社会的な責任を果たしているかどうかを判断します。
したがって、ビジョンが明確に定義され、それが企業の活動や文化にしっかりと浸透している場合、外部のステークホルダーから見てもその企業は信頼性が高いと感じられるでしょう。この信頼感は、取引のスムーズさや顧客のロイヤリティの向上、投資家からの安心感など、企業の持続的な成長や安定のために非常に重要な要素となります。
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企業でビジョンを浸透させるメリット
ビジョンの浸透は企業にとって多くのメリットをもたらします。具体的には、以下の3つのメリットが挙げられます。
メリット(1)社員の主体的な行動が促進される
ビジョンが企業内でしっかりと浸透、つまり広く知られて理解されている場合、社員たちは自らの業務がその大きな未来のビジョンにどのように寄与しているのかを理解することができます。
例えばある会社が「持続可能な社会を作る」ことをビジョンとして掲げている場合、その会社の社員は自分の日々の業務、たとえば商品の開発や販売、サービスの提供などが、どのようにその持続可能な社会の実現に貢献しているのかを考えることができます。このように自分の仕事が社会的に大きな意義を持っていると感じることによって、社員は仕事に対して非常に大きなモチベーションを持つことができます。
そして、社員が自分の役割や業務の意義を明確に理解すると、それは彼らの行動や態度にも大きく影響します。単に上司の指示を待つのではなく、自ら主体的に行動し、新しいアイデアを提案したり、積極的にチームでの協力を促進するようになるでしょう。また、彼らは自分の仕事に誇りを持ち、それを最高のクオリティで完成させようと努力します。
以上のようにビジョンが浸透している企業では、社員が自分の仕事の背後にある大きな目的や価値を感じ取ることができるのです。これによって、社員はただの業務の一部としての自分ではなく、企業の大きな目標達成の一員としての自分を強く意識し、日々の業務にも熱心に取り組むようになるのです。
メリット(2)人材の維持・確保がしやすくなる
ビジョンが明確であるということは、企業が「これからどうなりたいか」「何を大切にしたいか」という方向性や価値をしっかりと持っていることを意味します。このような明確なビジョンは、単に業績や利益を追求するだけの企業よりも、優秀な人材にとって魅力的に映ることが多いのです。
優秀な人材とは、仕事を通じて高い給与を得るだけでなく、自らのスキルや知識を生かして社会や組織に何らかの価値を提供したいと考える人々のことを指します。彼らは自らの働きがいや成果を求めるため、単なる日々の業務に満足することなく、もっと大きな意味や目的を持った仕事を望んでいます。
そこで、明確なビジョンを持つ企業は、優秀な人材にとって非常に魅力的な場所となるのです。彼らはその企業のビジョンに共感し、自分自身の価値観や目標と合致していると感じることができます。例えば、企業のビジョンが「持続可能な社会の実現」であれば、環境や社会に貢献することに情熱を持つ人材は、その企業での働きがいや成果を強く感じることができるでしょう。
その結果、優秀な社員は企業に長く留まる選択をする可能性が高まります。なぜなら、彼らが求める働きがいや目的を、その企業で実現できると感じるからです。結果として、明確なビジョンを持ち、それを浸透させる企業は、優秀な人材を魅了し、長期的な成功や成長につなげることができるのです。
メリット(3)良好な社外評価を得られる
ビジョンが企業全体にしっかりと浸透しているとは、企業の各レベルのスタッフや役員が共通の目標に向かって動いている状態を指します。そして、このような状態は、企業のブランド価値や信頼性の向上に大きく貢献する要因となります。
企業と関わりを持つ様々な人々や団体(顧客、取引先、投資家など)は、企業の行動や意思をしっかりと観察しています。彼らは、企業が言っていることと実際にやっていることが一致しているか、また、企業が掲げるビジョンや理念に従って行動しているかどうかを評価する傾向があります。
企業が明確なビジョンを持ち、そのビジョンに基づいて日々の業務を進めていると、外部のステークホルダーはその企業を「誠実で信頼できる」と高く評価するでしょう。例えば、ある企業が「持続可能な環境を守る」というビジョンを持っている場合、その企業が環境保護活動を積極的に行っていれば、顧客や投資家はその企業を信頼し、より一層その商品やサービスを利用したり、投資を行いたいと感じるかもしれません。
逆に言えば、ビジョンを掲げているものの、そのビジョンとは異なる行動を取る企業は、ステークホルダーからの信頼を失う可能性があります。
つまり企業のビジョンを社員に浸透させることは、企業の評価や信頼性を向上させる重要な要素であり、それが結果的に企業のビジネスの拡大や成功につながることが期待されます。企業はそのビジョンを実際の行動で示すことで、より強固な信頼関係を築くことができるのです。
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ビジョン浸透のプロセスについて
企業が成功を収めるためには、ビジョンの浸透は欠かせません。しかし、この浸透は一夜にして実現するものではなく、段階的なプロセスを経る必要があります。
認知の段階
企業のビジョンとは、その企業が目指す未来の姿や長期的な目標を示すものです。このビジョンは、企業がどのような方向に進むべきかの大きな指標となるため、非常に重要です。そのため、ビジョンを実現するための第一歩は、そのビジョンを企業関係者全員、特に実際の業務を行っている社員が知ることから始まります。
しかし、ただビジョンを知ってもらうだけでは十分ではありません。なぜなら、単に「我々のビジョンはこれです」と言われても、それが何を意味するのか、またそのビジョンを持つ理由や背後にある深い意義を社員が理解しなければ、ビジョンを日々の業務に活かすことは難しいからです。
例えば、「持続可能な社会を目指す」というビジョンがあったとします。これを単に伝えるだけでは、社員は「持続可能な社会って何?」や「どうしてそれを目指すの?」という疑問を持つかもしれません。ここで大切なのは、ビジョンが示す方向性やその背後にある企業の価値観や思いを、社員が深く理解し、自分の仕事と関連付けて考えることができるように伝えることです。
このためのコミュニケーションは、ただ情報を発信するだけでなく、受け手がそれをどのように受け取り、どう感じるかに焦点を当てたものでなければなりません。そのため、企業はビジョンを明確に伝えるための様々な手法や資料を活用するという工夫が必要です。これには、プレゼンテーション、ワークショップ、パンフレットやビデオなど、さまざまな方法が考えられます。ここで重要なことは、社員がビジョンに対して興味を持ち、それを自分の仕事と関連付けて考えるきっかけを作ってあげることです。
共感の段階
ビジョンを持つということは、企業が「私たちはこのような未来を目指しています」という明確なメッセージを持つことを意味します。しかし、そのビジョンをただ伝えるだけでは、ビジョンの本当の価値は生まれません。そのビジョンに、実際に働く社員たちが「私たちもその未来を実現したい!」と感じ、共感することが非常に重要です。
この「共感」というのは、単に情報を知っているというレベルを超えて、社員が心の底からそのビジョンを受け入れ、そのために何ができるのかを考えるようになることを意味します。たとえば、企業が「地球環境を守る」というビジョンを掲げていた場合、社員がこのビジョンに共感するとは、彼らが自らの業務の中で「私の仕事を通じて地球環境をどのように守っていけるだろうか」と考え、行動するようになることを指します。
しかし、この共感の段階へと移行するためには、企業側からのアプローチが不可欠です。なぜなら、多くの社員は日々の業務に忙しく、ビジョンと自分の仕事の関連性を自ら考えるのは難しいからです。このため、企業側は、ビジョンが社員の日常の仕事や成果にどのように関連しているのか、どのようにそのビジョンを具体的に実現していけるのかを明確に示すことが求められます。
例えば、上記の「地球環境を守る」というビジョンを掲げる企業は、商品開発の際の環境への影響や、リサイクルの取り組み、エネルギーの効率的な使用方法など、具体的な取り組みを通じて、そのビジョンが現実のものとしてどのように実現されるのかを社員に示すことができます。
このようにして、ビジョンが抽象的なものでなく、実際の仕事の中で具体的に体現されるものであると感じることで、社員の共感や賛同が生まれやすくなるのです。
実践の段階
ビジョンをただ知っているだけでは、企業全体としてそのビジョンを実現するための動きは生まれません。ここで大切なのは、社員たちがそのビジョンを単なる文字や言葉としてではなく、実際の仕事の中での行動の指標や、その業務の中での意義として受け取ることです。この受け取り方の違いが、ビジョンの有無による企業の動きの違いを生む要因となります。
社員たちがビジョンに共感するとは、彼らが心の底から「この企業が目指す未来は、私も実現したいと思う未来だ」と感じることを意味します。だからと言って、その感じ方は一度や二度の説明で得られるものではありません。社員たちが日常の業務を通じて、そのビジョンがどのように自分たちの仕事や業績、そしてそれによる評価に関連してくるのかを実感することが必要です。
例えば、企業が「お客様の満足度を最優先する」というビジョンを掲げていた場合、それが具体的にどのように社員の仕事に影響するのかを考えてみましょう。商品を開発する部署では、お客様の声やフィードバックを取り入れた製品改善が求められるでしょう。
一方、営業部門では、お客様とのコミュニケーションを大切にし、真摯に対応することが求められます。
このように、ビジョンが社員の仕事内容や方法に具体的にどのように関わってくるのかを明確にすることで、社員はビジョンを自分のものとして受け入れ、それに賛同しやすくなるのです。
協働の段階
ビジョンを掲げること自体は重要ですが、それを実現するためには、ビジョンに賛同し行動する社員が不可欠です。ビジョンが最終的に実際の行動や結果に結びつくためには、企業全体が一つの大きなチームとして動くことが求められます。
考えてみれば、大きな目標や夢を実現する際、個人の力だけでは難しいことが多いですよね。同じように、企業のビジョンも、一部門や一部の社員だけの力では実現が難しいものが多いです。そのため、企業全体が一つのチームとなり、それぞれの役割を果たしながらも、全体の方向性を見失わないように動くことが大切となります。
この「チームとしての協働」というのは、単に一緒に働くことだけを指すわけではありません。異なる部門やチームがそれぞれの専門知識やスキルを活かし、互いに協力し合いながら、共通のビジョンに向かって進むことを意味します。たとえば、商品開発部門が新しい製品を作る際、マーケティング部門との連携が強化されれば、市場のニーズに合った製品をより迅速に開発することが可能となります。
このように、企業全体が協働して行動する段階になると、ビジョンに基づいた具体的な行動が加速します。そして、異なる部門やチーム間の連携が強化されることで、企業としての総合的な力が増し、ビジョンの実現に向けた組織全体の努力が促進されるのです。このような協働の力によって、企業はより大きな成果を上げることができるようになります。
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企業でビジョン浸透させるための施策例
ビジョンをしっかりと浸透させるためには、具体的な施策の実施が不可欠です。ここでは、3つの施策の例を紹介します。
評価制度・表彰制度の導入
企業や組織の中で「ビジョン」というのは、これから目指すべき方向や未来の姿を示す大切なものです。しかし、このビジョンが紙の上だけのものとして終わってしまっては意味がありません。実際の業務の中で、社員たちがこのビジョンを心に留め、それに基づいて積極的に行動することが求められます。
では、社員がビジョンに基づいた行動をとるためには、どのようなことが効果的でしょうか。その一つが、正当な評価と報奨です。人は自分の努力や成果が評価されることです。自分たちの行いが報われるとわかれば、社員もさらなるやる気やモチベーションが湧いてきます。
この原理を利用して、ビジョンに合致した行動や成果を持った社員を適切に評価し、報奨することで、その社員の意欲を高めることができるのです。
さらに、このような評価や報奨を隠れて行うのではなく、表彰制度などを通じて公然と行うこともおすすめです。例えば、毎月の会議で「今月のビジョン実現賞」として、特にビジョンに基づいた素晴らしい成果を上げた社員を表彰するような取り組みが考えられます。
こういった公の場での称賛は、受賞した社員の自信やモチベーションを高めるだけでなく、他の社員にも「私も頑張れば、こんな風に認められるかもしれない」という希望や動機を持たせることができます。
つまり、ビジョンに基づいた行動や成果をしっかりと評価し、それを公に称賛することで、全社員の行動の質を向上させ、組織全体としてのビジョンの実現を加速させることが期待できるのです。
コミュニケーションを活発にする仕組みの構築
ビジョンをただ掲げるだけでは、実際の業務や行動には反映されにくいものです。どれだけ素晴らしいビジョンを持っていても、それが社員一人ひとりの心に届かなければ、真の意味での効果を発揮することはできません。
では、どのようにしてこのビジョンを社員全員に浸透させることができるでしょうか。その鍵となるのが「コミュニケーション」です。人は情報や価値観をコミュニケーションを通じて共有し、理解を深めることができます。ビジョンに関するコミュニケーションの機会を増やすことで、社員がビジョンを自分のものとして受け取りやすくなります。
たとえば、定期的にミーティングを開催し、その中でビジョンに関する話題を取り上げることで、社員との間でのビジョンへの理解や共感を深めることができます。また、フィードバックセッションを設けることで、社員からの意見や感想を直接聞くことができ、ビジョンの具体的な実現方法についてのアイディアを共有することができます。
さらに、企業の文化や価値観もビジョンの浸透に大きく影響します。オープンなコミュニケーションを奨励する文化が形成されている場合、社員は自らの意見や考えを積極的に共有するようになり、それがビジョンの浸透に繋がります。
このように、コミュニケーションの機会を増やすことで、ビジョンが単なるスローガンではなく、日々の業務や行動において実際に生きてくるものとなります。そして、そのビジョンを基にした共通の目標や方向性のもと、組織全体が一丸となって動くことで、より大きな成果を生み出すことができるようになるのです。
研修の実施
ビジョンをただ社員に伝えただけでは、具体的にどのような行動をとるべきか、またその目標がなぜ重要なのか、といった深い理解は得られません。そのため、社員の理解を一層深め、ビジョンに基づいた実際の行動を取るためのサポートが必要となるのです。
ここで役立つのが「ビジョンに関する研修」です。研修を通じて、社員はビジョンの背後にある深い意義や価値を学びます。たとえば、企業が「持続可能な社会の実現」をビジョンとして掲げている場合、そのビジョンがなぜ重要なのか、またそれを達成するためにはどのような取り組みが必要なのかを、研修で深く探求することができます。
さらに、研修ではビジョンを実際の業務にどのように反映させるかについての方法やテクニックも学ぶことができます。例えば、上記のビジョンを実現するために、日々の業務の中で環境にやさしい選択をするための指針や、チーム内での持続可能な取り組みの推進方法など、具体的な行動のヒントを得ることができます。
このような研修を定期的に実施することで、社員はビジョンに対する理解を深めるだけでなく、その理解を基にした具体的な行動をとるようになります。また、研修を通じて得た知識やスキルを実際の業務に生かすことで、ビジョンの実現に向けた組織全体の動きが加速することが期待されます。
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まとめ
ビジョンとは、企業が目指す理想や将来の目標を示すもので、企業の行動の指針となります。企業でビジョンをしっかりと浸透させることは、社員が主体的に行動するようになり、優秀な人材を引き寄せて維持する手助けとなり、また企業の外部からの評価も向上させる重要な要因です。
ビジョンを浸透させるメリットは、主体的な社員の増加、人材の安定、そして良好な社外評価の獲得につながることです。ビジョンを浸透させるには、初めに社員がビジョンを知り理解する認知の段階、そのビジョンを受け入れる共感の段階、実際の行動に移す実践の段階、そして全社員が一つのチームとして動く協働の段階が必要です。
組織のビジョンがしっかりと社員に浸透することは、組織の方向性を明確にし、一貫した行動を取る上で非常に重要です。このビジョンの浸透を助けるアプローチとして、EOS(Entrepreneurial Operating System)というフレームワークが存在します。
トラクションとは実行力のこと。この本は単に、企業の経営責任者のためのものではありません。経営チームから全ての従業員までもを対象にしています。
企業の文化、規模、業種、業績などにより、仕組みづくりの在り方は大きく異なります。EOS導入の成功事例を交えて、弊社スタッフが具体的な説明をさせていただきます。
経営の方向性に悩んでいる経営者の方はぜひ、EOSを試してみてくださいね。
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