親の仕事を継ぐ、つまり親子間の事業承継は決して珍しい話ではありません。会社規模の大小を問わず、そして業種・職種に関わらず、親子間の事業承継はいつの時代でも多く見受けられます。 今回のコラムでは、親の仕事を引き継ぐにあたって必要な考え方、能力などをお伝えするとともに、親子間の事業承継のメリット・デメリットについてもご紹介します。
親の仕事・会社は継ぐべきなのか
仕事を継ぐ際に起こる悩み
継いでしまうとやり直しが効かない
家業を継ぐことは、結婚と同じくらいの覚悟が必要だと言っても過言ではありません。親子間の事業承継は親族や現従業員、さらには顧客など周囲の期待に応える形で満を持して行われることが多く、継いだからには離婚や浮気は許されない=やり直しが効かないのです。よって不安や迷いがあるうちは時期尚早ですし、本当は別にやりたいことがあり家業を腰掛け程度にしか考えていないようであれば、家業を継ぐことはおすすめしません。従業員との関係が不安
古くからの従業員は会社に対する忠誠心が強く、会社で起こっていることに対して当事者意識が高いものです。良くも悪くも先代のやり方や考え方に染まっていた従業員の中には、新しく社長となった二代目に対して厳しい目を向けるかもしれません。社長が代替わりしたことに対する従業員の反応や、新社長と従業員との関係性の変化が不安というのはよくある話です。経営について何も知らない・勉強しなくてはいけない
新社長となる自分自身に一定の社会人経験があったとしても、一社員としての経験と経営者としての経験は全く別物です。新社長として事業承継するまでは他の企業で働いている場合には、いざ事業承継となったときに経営について何もわかっていないことに気づくかもしれません。経営者として必要な知識や経験は、事業を継いでから実践の中で体得していくことになるでしょう。親の仕事を継ぐ、二代目社長になるときに必要な考え方
まず、親のやり方を踏襲しなければいけないという考え方をやめることです。例え親の代で事業が大成功していたとしても、時代の移り変わりとともにやり方・考え方は変えていかなくてはなりません。「こんな時、先代ならどうするのだろうか……」と、すぐに拠り所を求めず、自分のやり方・考え方を確立していくべきです。 また、自分が理想とする組織像をできるだけ細かくイメージし、自らの手によって理想を具現化していきましょう。せっかく社長になったのですから、会社の未来は自分で自由に描くことができます。親の目を意識せず、自信を持ってゼロベースで経営を考えていきましょう。 二代目社長の悩みについてはこちらの記事でも紹介しています。是非ご覧ください。 「二代目社長になったけど辞めたい」 こんな時はどうしたらいい?
親の仕事を継ぐことのメリット・デメリット
親の仕事を継ぐというのはあなたの人生にとって大きな決断となるでしょう。継ぐことのメリットやデメリットをしっかりと理解して決定を下しましょう。仕事を継ぐことによるメリット
自由な経営ができる
親の仕事を継ぐ形の事業承継であっても、社長は社長です。社長は会社のトップであり、会社の中で社長以上に裁量権のあるポジションはありません。全くの手放しの自由というわけではありませんが、社長になったからには自分のセンスを生かして自由なスタイルで経営ができます。親から引き継いだ会社を大きく発展させるのは、他ならぬ自分自身だと思うとやる気が出るでしょう。フレキシブルに働くことができる
社長業は多岐に渡ります。定時に出社して、オフィスワークを黙々とこなし、時には残業をして……というような働き方では決してありません。業務範囲が広く、責任も重大ですが、自分のやりやすいようにスケジュールを組み立て、フレキシブルに働くこともできます。場所や時間に縛られないというのは、社長の持つ特権であるとも言えます。通勤に時間を割かなくていい
親の仕事を継ぐ場合、規模が小さい会社であれば自宅と事業所が兼用になっていることが多いです。もし社長となった自分が実家住まいであれば勤務地は自宅になるので、通勤というものがなくなります。通勤に時間を割くこともなく、通勤ラッシュからも解放されるのはメリットと言えます。仕事を継ぐことによるデメリット
安定性に欠ける
よほどの大企業でない限り、会社というものは明日の経営がどうなるかわかりません。社長は当然のことながらサラリーマンとして給料をもらう立場ではないので、自分と従業員の生活のために会社として売上を立てなければなりません。やることをやっていれば月々決まったお金が入ってくるという安定性がないことは、やりがいにも通じますがデメリットとも言えます。従業員との関係性や人間関係
二代目社長は、何かと色眼鏡で見られます。「自分の方が社長にふさわしいのに、身内というだけで社長になるのは不公平だ」「経営のことを何も知らない青二才が本当にやっていけるのか」などど、二代目の社長就任を快く思っていない従業員もいるかもしれません。そのようなマイナスイメージからのスタートでは、従業員との関係構築に時間がかかるでしょう。退職や転職が難しい
一度家業を継いでしまったら、簡単に辞めるわけにはいきません。親子間の事業承継では引き継ぐ人脈が公私混同であったり、昔から自分のことを知っている従業員も多くいたりするので、退職や転職などをビジネスとして割り切ってやることが難しいです。もしどうしても他にやりたいことがあるのならば、まずは事業を軌道に乗せ、さらに後継者を育ててからでないと辞任できないので長期的な計画が必要です。親の仕事・会社を継ぐタイミング・適した年齢はあるのか
親の仕事を継ぐか悩んでいる方の中には、親からは継いでほしいといわれているもののどのようなタイミングで継げばいいのか悩んでいるという方もいるのではないでしょうか。ここでは、実際に親の仕事を継ぐタイミングや年齢について紹介します。親の仕事・会社を継ぐタイミング
親の引退
社長である親が高齢になったときや、病気などで現職を続けるのが難しくなったときなどは、会社を継ぐタイミングと言えます。これらの場合は引き継ぎまでの準備期間を十分に設けることができます。相続
社長である親が事故などで突然亡くなってしまった場合、相続するものの中に会社の株式なども含まれます。このとき、株式の相続とともに社長というポジションを継ぐというのもよくあるケースです。親の仕事を継ぐ年齢はどれくらいが適しているのか
親の仕事を継ぐ年齢は、早ければ早いほどよいです。自分なんてまだまだ……と思っているうちに、あっという間に10年20年経ってしまいます。若いうちに事業を引き継いでいれば、柔軟な思考で新しいことにもチャレンジできますし、例え失敗したとしても再び挑戦するだけの気力と体力があります。