「社長業って何?」と聞かれて答えに詰まる社長は多くいることでしょう。社長とは立場でもあり肩書きでもあり、存在そのものでもありますが、「これが私の考える社長業だ!」と迷いなく語ることができる社長はおそらく一握りでしょう。
もし、社長業に明確な定義があれば世の中の社長は苦労しません。より良い社長になるために、社長は常に自身のあり方を模索しているのではないでしょうか。
そこで今回は、「社長業とは何か」という命題に対して、何らかのヒントになる考えをご紹介します。
社長業とは何か
社長業とは何か。結論から申し上げると答えは一つではなく、社長の数だけ答えがあるというのが正直なところです。しかし、一般的な理解としてお伝えできることとしては、
・会社の経営方針を策定する
・会社の意思決定を行う
・会社のビジョン・ミッションを打ち出す
といったところでしょうか。
さらに、「社長」というのは会社法で定められた正式な役職ではなく、一般的に使われている“会社で一番えらい人”に対する呼称に過ぎません。会社法で定められた役職としては代表取締役であり、最近ではCEOに代表されるような海外の経営スタイルに準じた呼称も広がっています。つまり、社長業について諸説あるのと同様に、社長の定義自体がそもそも曖昧ということです。
社長が忙しくなる理由
「社長業とは何か?」に対する答えはさておき、社長が常に忙しいということはイメージできるでしょう。では一体、社長が忙しくなってしまう原因は何でしょうか。
管理の限界
社長は会社のトップゆえに、会社で起こっていることを隅々まで管理しようとする社長がいることも確かです。しかし、実際に一人の管理者がマネジメントできる人数は、7名〜8名が限度とも言われています。社長が会社を経営する傍ら、多人数の社員に対して指示を出し、管理・育成することはそもそも無理があるということです。社員数の数によっては社長が全てを管理することは可能ですが、それでは会社は成長しません。また、管理に注力し過ぎて肝心な会社経営がおろそかになっては本末転倒でしょう。
現場に入らなくてはいけない状況
人材不足であることから、管理職の社員だけではなく社長までもがプレーヤーになってしまっている会社はよく見受けられます。大切な商談やここ一番という時に現場で指揮を執ることはあるかと思いますが、一般の社員と同様に日常的に現場に入っているようでは、社長業は務まりません。社長としてやるべきことは他にもたくさんあるので、社長が現場に入らなくては回らないような状況であれば早急に改善すべきです。
社長に求められることはなにか

事業の目標を明確にする
会社とは営利を目的に活動する法人なので、売り上げが全てとは言いませんが「お金を稼ぐこと」を目標にするのは極めて健全なことです。事業の目標とはすなわち売り上げ目標でもあり、「今月は●●売り上げる」「今月は●●件の新規顧客を獲得する」など具体的に数値化された目標があることによって、社員の士気は高まります。
集客の仕組みを作る
お客様があって会社は成り立っているので、安定した経営を続けるためには継続的な集客が欠かせません。魅力的なサービスやプロダクトを提供し続けるだけではなく、それらを一人でも多くの人(潜在的な顧客)に知らせ、利用(購入)してもらうには、しっかりとした集客の仕組みを作ることが大切です。今やテクノロジーの発達のおかげで集客の手法は多様化・複雑化しているので、IT技術を駆使しながら効率的に集客を行うとよいでしょう。
資金繰りを行う
資金繰りも社長の重要な仕事です。会社経営をする上で、時には大きな借り入れをしたり、一時的に売り上げが落ち込んだりするときもあるかもしれません。しかし、会社として社員を抱えている以上は、社員と社員の家族を守るためにも一定の運転資金は必要です。社会情勢の変化や会社の経営状況の浮き沈みがあっても、最低限会社が回るように資金繰りをすることが社長には求められています。
ビジョン作りの指揮を執る
会社として明確なビジョンを策定して広く周囲に伝えることは、社員に対してだけではなく顧客に対しても安心感を与えます。「何をやろうとしているのか」「何処に行こうとしているのか」など、会社の方向性や中長期的なビジョンを示し、社員と志を共有して“強いチーム”をつくることこそ社長のやるべきことではないでしょうか。
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企業におけるビジョンの作り方 機能するビジョンを作るには
社長業に専念できない問題点

組織がある程度の大きさになると、いままでと同じ方法では組織を統率できなくなるものです。社長であるあなたが営業、サービス、会計、クレーム、フォローアップに関与し続けるわけにはいかないのです。
会社が次のステージに進むためには、社長が権限を委譲できるかどうかにかかっています。あなたの仕事を誰かに任せない限り、あなた自身の能力を最大限に発揮することはできないからです。レストランが急成長しているのに、経営者がシェフもサービスも皿洗いもやり続けるのは現実的とは言えないですよね?
些細なことにしがみつくと、それが会社の成長を妨げてしまいます。社長であるあなたが個人的に成長すれば、会社はきっと成長するのです。社長は「社長業」に専念するべきです。
社長が社長業に専念するために必要なこと
中小企業においては、社長が全部門の責任者を担当していることも珍しくありません。 そして、オールラウンダーである社長は、自分よりも能力の低い担当者を採用してしまいがちです。しかし、これでは同じことの繰り返しで社長の忙しさは永遠に続いてしまうでしょう。
社長がするべきことは、各部門のリーダーを選び、育てることです。万が一、組織内に該当者が存在しない場合は、外部から人材を探してくる必要があります。組織を大きくするための人材採用で気を付けたいのは「自分よりも優秀な人」を採用することです。
即戦力となる優れた人材を確保することは容易なことではありません。しかし、会社を支えるのは人そのものであり、目の前の忙しさにかまけて採用業務を後回しにしているようでは会社の成長はありません。社長業に専念するためには自社の弱点を直視し、必要な人材を早急に確保する必要があるのではないでしょうか。
EOSで機能別組織を実現し、社長業に専念する
社長業に専念するためには、 現状の会社の組織図を見直すべきです。私たちEOSが提唱する組織図=アカウンタビリティチャートでは、「ビジョナリー」「インテグレーター」が上に位置し、その下に「営業・マーケティング」「オペレーション」「バックオフィス」という3つの機能が存在しています。そして、この3つの機能が強くならなければ組織は大きくなりません。
「営業・マーケティング」「オペレーション」「バックオフィス」それぞれの責任の所在を明確にするために、どの機能も責任者は一人にすることが重要です。つまり、営業・マーケティングを監督するのは一人、オペレーションを運営するのも一人、バックオフィスを管理するのも一人だけです。
現状として、すべての椅子に社長が座っていることもあるでしょう。たとえば、「営業・マーケティング」「バックオフィス」の2つの機能について、完全に任せることができる人を育成または採用できたならば、社長は急に暇になることでしょう。しかし、この浮いた時間ができなければ「社長業」のための時間を確保することが難しくなります。
社長は「インテグレーター」の機能に特化するべきです。インテグレーターとは、会社の主要な機能を調和させながら統括する人です。主要機能の担当者が優秀であれば、組織全体には健全な摩擦と緊張感が生まれることでしょう。インテグレーターは、組織の接着剤として、そのような摩擦を推進力へと変えていくのです。
まずは、あなたの組織を客観視するために、EOSの「組織のチェックアップ」を試してみてはいかがでしょうか。ご自身では気付くことができない組織としての問題点がわかり、社長としての課題が見えてくるかもしれません。

そして、「組織のチェックアップ」の結果を確認するためには、THE EOS TOOLBOX – EOS JAPAN 起業家のための経営システムからEOSツールボックスをダウンロードします。
そして、もう一つおすすめするものは、『トラクション ビジネスの手綱を握り直す 中小企業のシンプル・イノベーション』です。この『トラクション』を読むことで企業経営における6つの最重要要素を理解することができます。トラクションとは実行力のこと。この本は単に、企業の経営責任者のためのものではありません。経営チームから全ての従業員までもを対象にしています。企業の構成員一人ひとりがビジョンを実現するために「実行」していく、そんな企業づくりのために必要な考え方とツールが詰まった一冊となっています。
EOSは中小企業の社長に向けた実践的な経営システムです。シンプルな考え方と実用的なツールによって、何千人もの起業家・経営者が「ビジネスにおいて得たい結果を得る」サポートをしてきました。社長として本来の業務に専念したい経営者の方、ご自身の会社のさらなる発展を本気で考えている方は、ぜひ一度ご相談下さい。
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