経営者にとって、いささかショッキングなテーマをあえて今回は取り上げます。
それは、「自分ははたして社長に向いているのかいないのか」という悩ましい問題です。
例え会社の経営が順調で、社内の雰囲気が良好だったとしても、社長は常に何かしらの“心配の種”を見つけてしまうものです。会社の方向性は間違っていないか、社員は本当に満足しているのか、そして、自分は社長として職務を全うしているのか……。社長が抱える悩みの究極とも言える、社長に向いている/いない問題を一緒に考えていきましょう!
社長に向かない性格や特徴はある?
社長に向かないタイプとして、以下のようなタイプを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
・優柔不断
・感謝の気持ちが足りない
・人の話を聞かない、自分の意見を押し通す
いずれも、社長としてというよりも、人として好ましくない傾向と言ってもいいかもしれませんね。
まず、優柔不断について。
社長は常に何かを決断しています。というより、決断こそが社長の仕事と言っても過言ではないかもしれません。会社の命運を左右するような重大な決断から、「今日のランチは何食べようかな」というような些細な決断まで、1日だけでも何回も決断しています。ビジネスは絶えず変化し、社長の決断が1秒遅れるだけで潮目が変わるものです。つまり、決められないタイプ=優柔不断というのは会社にとって致命的なのです。
次に、感謝の気持ちについて。
偉業を成し遂げた人や成功者などは口を揃えてこう言います、「みなさんのおかげで、ここまでやることができました」と。周囲の支えや協力があって何かを達成できるというのは、どの世界でも共通して言えることではないでしょうか。会社は社長だけのものではなく、また会社としての成長も社長だけの力によるものではありません。社員一人ひとりのパフォーマンスの集大成として会社の成長があるのです。もし、会社として素晴らしい成果や業績をあげた時に、それを経営者としての自分の手柄にするような発想では、社長に向いてないといえます。
最後に、人の話を聞かない、自分の意見を押し通すについて。
自分の考えに絶対的な自信を持っていて自己愛が強いタイプほど、この傾向が強いです。このように聞くと、「それはいわゆるカリスマ性があるということで、社長に向いているタイプなのでは?」と思ってしまうかもしれませんが、そう単純な話ではありません。ここで言いたいのは、それが正しいかどうかの精査を怠って、「とにかく俺がイエスと言ったらイエスなんだ!」としてしまう、ジャイアンタイプということです。自分がこれまでに培ってきた経験や知識に縛られ、ある意味不自由になっている社長は意外と多くいるものです。しかし、このような社長はやがて孤立してしまうでしょう。
以上、一般的に社長に向かないといわれるタイプについてお話してきましたが、実は「社長に向かないタイプ」などありません。どのタイプであっても自分にあった経営スタイルが存在します。

社長に向いてないと思ってしまうのはどんな時?
私たちが過去にサポートした会社の社長は、このようなコンプレックスを抱えていました。その社長は創業者ではなく、いわゆる2代目社長でした。先代は面倒見がよくて人望も厚く、周囲から慕われる優しいタイプの社長でした。しかし、自分には先代のような気配りや思いやりがないと感じていて、社員の生活まで気を使ったり面倒をみたりできないことに悩んでいました。
その社長には、先代のスタイルとは違うものの、社長として会社をマネジメントするだけの素養は十分にあったので自身のスタイルを貫き通せば良かったのですが、先代というロールモデルを意識しすぎて自信が持てませんでした。自分が先代のスタイルに合わせようとするあまり、しんどくなってしまっていたのです。
2代目は既に確立されている会社のスタイルや、先代の人間性に自分をアジャストさせようとしますが、それでは逆に可能性を狭めてしまいます。誰かと比較して、「自分は向いていないな」と思うこと自体、ナンセンスなのです。
社長はこうあるべきだ、という明確な定義はありません。あなただけの社長スタイルがあるのです。どのようなタイプの人間でも、社長ができるのです。

自分のスタイルでやっていくには何が必要なのか
社長に向いているタイプと向いていないタイプについて、“一般論”として先述しましたが、実は社長に向き/不向きは関係ありません。会社経営のスタイルは社長の数だけあり、ある意味どれも正解と言えるのです。
経営者はこうあるべきだという考えに囚われる必要はなく、あなたの思い通りにあなたのやり方で経営スタイルを確立していけばいいのです。社長業は学べば誰にでもできるものであり、社長としての仕事は「スキル」です。
社長としての「人を引っ張るスキル」は、大きくリーダーシップとマネジメントの2つがあります。
リーダーシップは未来を描いて指し示すこと。マネジメントはその未来の実現のために必要な行動をとることです。この2つに関しては、もともと備わっているものではなく、後天的に身に付けるものです。
社長と聞くと、周囲を惹きつけるカリスマ性と強烈なリーダーシップなどがイメージされるかもしれませんが、その素養は持っていても持っていなくてもいいものです。リーダーシップにもいろいろあり、全体を俯瞰する能力、公平公正な判断を下せる能力、思慮深さなどもリダーシップに含まれます。しかし、リーダーシップがあるだけでは組織は発展しません。会社としては、社長である自分自身が打ち出した方向性や下した判断を実行することによって利益を出していくこと、すなわちマネジメントも重要なのです。リーダーシップとマネジメントは車の両輪であり、どちらも社長が持つべきスキルです。
では、リーダーシップとマネジメントのスキルはどのようにして身に付けていけばよいのでしょうか。ここで、実際にEOSをインプリメントしたある会社のお話しをします。
その会社の社長は2代目で、自分に自信が持てずに日々悩んでいました。先代と同じようなやり方はできないと自分で分かってはいたのですが、自分なりのやり方がわかるわけでもなく、また、先代の社長と一緒にやってきた社員と今後自分がうまくやれるかという不安がありました。
そこで私たちは、まずその社長に対して自分が理想とする組織の姿を具体的に思い浮かべてもらいました。その次に、何年後かにはその組織が実現しているために、具体的な行動計画にして落とし込んでもらいました。さらに、その理想とする組織をどのように自分自身がハンドリングしていくのかという説明をし、EOSのツールを使って自走できるようになるまでサポートしました。漠然とした不安を言語化し、やるべきことが確認できたことで、社長は少しずつ自信を取り戻すことができました。
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