今回ご紹介するのは社員のやる気を引き出す方法、つまり経営者にとって永遠の課題である“人材”へのアプローチに関する話です。
企業は人なりと言いますが、企業が常にチャレンジを続け、健全に発展していくためには、社員の“やる気”が不可欠ですよね。このやる気を引き出すために、日々経営者は方法を模索しているわけですが、いずれの方法もまだまだ開発途上であり改善の余地がありそうです。
そこで、やる気を引き出す方法を考える前に、まずはやる気そのものについて少し詳しく触れてみましょう。
やる気は大きく分けて2種類ある!外発的動機と内発的動機とは?
やる気とは、動機やモチベーションとも同義で使われることが多く、要は主体的にそして精力的に何かに取り組む/向かうための要因ですが、大きくは2つに分類されます。1つに「外発的動機」があります。「外発的動機」とは、物や報酬などの「外的」な要因によるモチベーションのことです。幼少期に、「テストで100点をとったらラジコン買ってあげる」と言われ、頑張って勉強をしたことはありませんか?その時の努力や頑張りは、まさに外発的動機にあたるものです。
企業を例にとると、売り上げが目標額を達成したらボーナスがもらえるなど、身近なところで外的動機は誘発されているのです。
そしてもう1つが「内発的動機」です。「内発的動機」とは本人の興味や関心、あるいは好奇心や探究心に起因している内面から生ずる動機のことです。「内発的動機」の根底には主体性があり、本人の納得感も強いので、外発的動機よりも維持しやすい傾向にあると言えます。
一般的な解決策を紹介。これらは本当に効果があるの?
ドキッとするかもしれませんが、これからご紹介する一般的な解決策はいずれも多く欠点を抱えているものです。否定こそしませんが、およそ完璧とは言い難いものではあるので、もし企業としてこれらの解決策を採用しているのであれば、考え直してもよいかもしれません。報酬を上げる
頑張りや努力がお金に直結していて、成果をあげればあげるほど多くの報酬を支払うというのは、果たして理想的な解決策なのでしょうか。「お金のために働く」という概念は今も昔も一定数の人が持っているものです。お金があることによって描ける未来は変わり、可能性も広がるので、労働の対価としてより高い金額を望むことは健全な発想でしょう。しかし、それが働くことの本質かどうかはまた別の問題です。
もし、成果に対して逐一報酬を紐付けてしまえば「お金のために頑張って働こう!」という企業文化が醸成されてしまいます。それが企業理念や企業の価値観と一致していれば問題はないのですが、声高に「お金のために頑張ろう」と社員を鼓舞している企業が一体どれほどあるのでしょうか。お金は労働の対価ではありますが、それが目的ではない限り、報酬で動機付けを行うことは考え直した方がよいでしょう。
高いポジションを与える
EOS®のメソッドでは「正しい人」を「正しい席」に座らせることを重要と考えています。正しい人を育てるというのは人材開発にあたりますが、正しい席に座らせることは組織開発であり、企業戦略において特に慎重に行わなければならない部分かもしれません。要は、適材適所ということですね。しかし、適所ではなく、社員のやる気を引き出すためにあえて能力以上の高いポジションを与えてしまう経営者がいますが、それは賭けとも言える危険な行為です。
能力不相応のポジションは、本人にとってプレッシャーになるだけではなく、周囲の人間が不安感や不信感を抱くきっかけにもなるかもしれません。「大丈夫かな?」と思われるだけならまだしも、「なんであの人があの役職に?」と思われてしまっては信頼関係の構築が難しくなってしまいます。やる気を引き出すために安易に高いポジションを与えるのであれば、これらの可能性も踏まえて広範囲にわたって対策をしておくべきではないでしょうか。
しかし、ある要件を満たしているのであれば、高いポジションを与えることも効果的かもしれません。
EOS®のメソッドでは、企業のビジョンとそこにたどり着くまでのステップを定義するための「ビジョン/トラクションシート」や、そのビジョンを実現するための組織をイメージできる「アカウンタビリティチャート」などのツールがあります。それらの中に、GWC(後述)について問う質問項目があり、これら(GWC)全て満たしている場合に限っては、高いポジションを与えることも可能だということです。
GWCとは、
Get it: they understand how the job works, why it’s important, and what it entails (仕事のやり方や、その重要性・必然性についても理解している)
Want it: they have some level of passion about the job / they want to do it (仕事に対してあるレベルに到達するための熱意があり、そこに到達することを望んでいる)
Capacity: they can actually do the job (現実的にその仕事をやり遂げるだけの十分な能力がある) 社員がこれら全てに対してYESであることが、高いポジションを与える前提になっています。
飲み会を開催する
飲み会は、このご時世ですっかり難しくなってしまったコミュニケーションの一つではありますが、今でも社員同士の親睦を深める手段として企業の間では根強く残っています。飲み会の場で社員を鼓舞し、本人のやる気を引き出したと思っても、それは残念ながら一時的なものとして終わってしまいます。飲み会の場というのはいわば“非日常“であり、その時に受けた感銘などは時間とともに風化してしまうもの。その時いくらモチベーションをあげたところで、社員のGWCと企業のコアバリューが一致していなければ2、3日でモチベーションは低下してしまいます。飲み会というのは、あくまで楽しみのために開催するのが望ましく、そこに意味や役割を付加することはボタンの掛け違いと言えますね。

EOS®の導入で“無理なく”やる気を引き出す〜驚きの5-5-5ミーティングとは?
前項でご紹介した3つの解決策は、言ってしまえば「場当たり的アプローチ」であり、うまくいく時もあればうまくいかない時もあるものです。よほど余裕のある企業でない限り、社員のやる気を引き出すために、このような不安定なアプローチを採用することは現実的ではありません。そこで提案したいのが、EOS®の5-5-5ミーティングです。5-5-5-ミーティング
5-5-5-ミーティングはやる気のなさなど何らかの問題のある社員(Aさんとします)と直属の上司の2人で行い、以下の3ステップで進めます。ステップ1. あらかじめ決まっていて、全社員に周知してある「5つのコアバリュー(会社の共通の価値観)」と、Aさんの最近の行動が合致しているか2人でチェックします
ステップ2. Aさんがコミットした「5つの四半期の重要タスク」の進捗を2人で確認します
ステップ3. Aさんのポジションに求められる「5つの役割」を果たせているか2人で確認します
これだけです。5つのコアバリュー・5つの重要タスク・5つの役割を順番にチェックするので、5-5-5ミーティングと名付けられています。Aさんは問題を抱えているので、3つのステップのどこかで「ここができてなかったな」とAさん本人が気づきを得ることができます。他人から指摘されるより、本人が気づく方が改善する意欲が高まるのです。
この3ステップはほんの20~30分で完了することができます。何より「問題のある社員が出てきたな。どうやって対処しようかな。叱ろうか、優しく諭そうか、いっそ飲みに連れ出すか」などと思い悩む時間・エネルギーも必要ありません。「Aさん、30分ほど時間あるかい?」と聞くだけでOKなのですから。
「スリーストライクアウト」ルール
3回目のミーティングまでに改善が見られなければ、そこでAさんへの指導は終了です。そのポジションまたは会社自体にAさんがフィットしていない可能性を告げ、降格や配置転換を実施します。3回までは挑戦可能、でも3回で終了。ということで「スリーストライクアウト」ルールと名付けられています。非情なようですが3回のチャンスは与えていますし、ズルズルと引き伸ばしてもAさんと会社双方にとって良いことはありません。見切りをつけることでAさんはもっと活躍しやすい場を探すきっかけになりますし、会社もポジションに相応しい人をアサインできます。
以上がEOS®の5-5-5ミーティングの全貌です。シンプルすぎてびっくりしますよね。しかしその効果は想像以上なので、一度試してみる価値はありそうです。

今回は社員のやる気を引き出すための方法として、EOS®を活用した効果的なアプローチを紹介しましたが、EOS®は人材開発以外の企業の様々な問題に対してもアプローチが可能な汎用性の高いシステムです。
EOS®は日本ではまだ一部の経営者の間でしか認識されていませんが、アメリカを中心とした世界各国ではすでに10万社以上が導入し、それを用いて売上・利益を成長させているほど広く効果が認知されている経営システムです。
経営システムと聞くと、「堅苦しい」「自由度が少ない」「一方的に決められる」など、ネガティブなイメージをお持ちの経営者もいらっしゃるかもしれません。しかし、EOS®がこれらの全てを払拭できます。 EOS®は経営の全てを決めたりはしません。経営の基本、基礎、土台を提供するだけです。経営の最も重要な部分「どんなお客さまに、どんな商品・サービスを提供するのか?」「会社はどんな価値を社会にもたらすのか?」「それらを通じて、社長・経営陣・社員は何を得たいのか?」についてEOS®は一切答えを提供しません。 それらは社長と、社長を信じてついてくる会社のメンバー達と一緒に考えて、決めてください。それこそが、会社の独自性・オリジナリティと言えるのではないでしょうか。
企業全体にEOSの考え方を共有するのであれば『トラクション ビジネスの手綱を握り直す 中小企業のシンプル・イノベーション』もおすすめです。この『トラクション』を読むことで企業経営における6つの最重要要素を理解することができます。トラクションとは実行力のこと。この本は単に、企業の経営責任者のためのものではありません。経営チームから全ての従業員までもを対象にしています。企業の構成員一人ひとりがビジョンを実現するために「実行」していく、そんな企業づくりのために必要な考え方とツールが詰まった一冊となっています。是非ご一読ください。 本気で成長を目指している企業の経営者の皆様は、ぜひ私たちにお気軽にご相談下さい。