中小企業の社長は、とにかく“忙しい”というイメージがあります。重要な決断を下し、指示を出し、時には現場に出て自らが立ち回ることもある社長は、社長というよりマルチプレーヤーといった方がいいかもしれません。 しかし、このような状態は果たして健全でしょうか。社長が忙しいのは致し方がないとしても、その忙しさが「正しい」忙しさなのかどうかはあらためて考える必要があるのではないでしょうか。今回のコラムでは社長が忙しい理由を分析し、無駄な忙しさを解消して正しい忙しさへとシフトしていく方法をご紹介します。
なぜ社長は忙しいのか
社長が忙しい理由①:現場の仕事をし過ぎている
社長は組織の中で決してプレーヤーではありません。それどころかマネージャーですらなく、最高経営責任者として経営に邁進することが社長の責務です。しかし、中小企業の社長などはいつまでも創業当時の働き方が抜けずに、会社規模が大きくなっても社長自らがプレーヤーとして立ち回っていることもあります。経営もして現場の仕事もしているようでは、忙しいのは当たり前です。社長が忙しい理由②:会社全体の業務が非効率的
会社とは組織であり、組織とはシステムそのものです。会社が大きくなって業務量が増えてくると、より効率的に業務を回すオペレーションシステムが必要になってきます。しかし、目の前の仕事に追われていると、なかなか会社全体のオペレーションについての見直しができません。社長や社員が場当たり的に業務をこなしていると属人的な部分が抜けきれず、社長や社員の働き方がいつまでも非効率になってしまうため、どこかで思い切って見直しが必要です。社長が忙しい理由③:会社に人が多すぎる・少なすぎる
会社が数名のうちは、一人ひとりに適量の(あるいは少し多いくらいの)仕事が割り振られていましたが、会社規模が大きくなってくると会社全体の業務量に対して人が多すぎる、あるいは少なすぎるという状態になることもあります。人が多すぎると管理の対象が増えることになり、また逆に人が少なすぎては社長や社員の負担が増えることになるので、人員の見直しは適宜行うべきです。社長が忙しい理由④:自分の仕事を代わりにやる人がいない
社長の仕事である“経営”は、一見社長にしかできないように思われがちですが、経営の仕事は多岐にわたるので分業化することも可能です。社長が自分で自分の仕事を囲い込み、他の誰にもできないようなやり方で管理していると、忙しくなった時に人に任せることも代わりにやってもらうこともできないので結局は自分の首を絞めることになります。
社長の忙しさを解消する方法
社長が忙しさを解消する方法①:会社の現状を正しく認識する
社長がいつも見ている先は会社の進むべき未来であり、まさに今ここで起こっている現実的な問題については意外と把握していないものです。社長が自らの忙しさを解消したいのであれば、まずは会社の現状にしっかりと目を向け、抱えている課題を棚卸ししてみることです。現状に対する深い洞察があってこそ進むべき方向が明確に見えてくるので、迷いや無駄な行動がなくなります。社長が忙しさを解消する方法②:効率的な働き方、スケジューリングをする
会社の現状把握ができたら、次は会社における自らの最も効率的な働き方を決めていきます。社長としてのスタンスを確立し、どのような役割を担えばよいのか慎重に検討しましょう。そしてある程度自分の働き方が見えてきたら、具体的にスケジュールに落とし込んでいきましょう。忙しさを解消することよりも、出来た時間で何をするかが重要
社長が忙しいということは、裏を返せばそれだけ会社が健全に機能しているということでもあります。どれだけ効率的な働き方が確立されても、捻出された時間には次々と予定が埋まってしまうものです。そうなると、社長は忙しさを解消するよりも、業務の無駄を極限まで減らして捻出された時間に何をするかということに注力した方がいいかもしれません。忙しいという状況は諦めて、自らに与えられた時間の質を上げていくことが大事です。社長が「正しく」忙しくなるためには
社長には社長のやるべきことがあります。つまり、社長は「正しく」忙しくなる必要があるのです。社長の忙しさを解消して社長が本当にやるべきこと
最も重要なのは権限委譲を行うこと
社長が持っている権限を洗い出してみましょう。社長の仕事とは、「何かを決定する」ことがほとんどですが、社長が行うべき決定とは何かと考えると、究極的には経営そのものに関することに集約されるので、その他諸々の決定に関する権限はいっそのこと社長以外の人間に譲ってもいいということになるのではないでしょうか。経営陣や上級管理職、場合によってはリーダークラスの社員でもいいかもしれません。社員に裁量をもたせ、何かしらの権限を与えると、業務に対する当事者意識も強化されるものです。社長に全ての権限があるようなワンマン経営では社長はいつまでも「無駄に忙しい」状況から抜け出せません。大胆に権限委譲することで、チームとして業務を遂行するというスタイルが確立され、社長の忙しさが解消されるのです。適切な人に適切な仕事を与えることで、社長がしなくてはいけない仕事に集中する
適材適所という考えは組織論の定番であり、また真理でもあります。人には得意/不得意や向き/不向きがあり、持っているスキルや専門性も異なるので、個々の能力が最大化される環境に人(社員)を配置することが会社の発展にとって重要なのです。社長の仕事を細分化したとき、社長以外の人間(社員)がやる方が高い成果を出せる業務領域は多くあるはずです。社長が自らの仕事に集中するためには、社長の仕事を社長にしかできない部分だけに絞り、その他の業務に関しては業務ごとに最も高いパフォーマンスを発揮できる社員に任せてしまいましょう。現場の仕事から会社を動かす仕事へ
冒頭でも述べましたが、社長の忙しさが問題となるのはプレーヤーとしての忙しさだった場合です。しかし、その忙しさが社長=最高経営責任者としての忙しさだった場合は、それは極めて健全な忙しさなので問題はないでしょう。社長の忙しさは会社の方向性を定めることや経営に関する重要な決定を行うなど、会社そのものを動かすことに関する忙しさでなければなりません。つまり、社長の忙しさとは“社長にしかできないこと”で忙しいことが正しいのです。正しい人に正しい権限を与える EOSで、中小企業の天井を突破しましょう
社長が忙しいのは悪いことではありません。しかし、その忙しさが「正しい忙しさ」なのかどうかは厳しく判断すべきです。もし社長の忙しさというものが、社長がやらなくてもよい業務で忙しい場合は、一度現状の会社の組織図を見直してみましょう。私たちEOSが提唱する組織図=アカウンタビリティチャートでは、「ビジョナリー」「インテグレーター」が上に位置し、その下に「営業・マーケティング」「オペレーション」「バックオフィス」という3つの機能が存在しています。EOSではこれらを“椅子”と呼んでいます。そして、正しい人を正しい椅子に座らせる=正しい権限を与えることこそが組織の発展のために重要だと考えています。現状として、すべての椅子に社長が座っていることもあるでしょう。たとえば、「営業・マーケティング」「バックオフィス」の2つの機能について、完全に任せることができる人を育成または採用することができたら、 社長は「インテグレーター」の機能に特化することができます。インテグレーターとは、会社の主要な機能を調和させながら統括する人です。主要機能の担当者が優秀であれば、組織全体には健全な摩擦と緊張感が生まれることでしょう。インテグレーターは、組織の接着剤として、そのような摩擦を推進力へと変えていくのです。
まずは、あなたの組織を客観視するために、EOSの「組織のチェックアップ」を試してみてはいかがでしょうか。ご自身では気付くことができない組織としての問題点がわかり、社長としての課題が見えてくるかもしれません。

さらに、もう一つおすすめするものは、『トラクション ビジネスの手綱を握り直す 中小企業のシンプル・イノベーション』です。この『トラクション』を読むことで企業経営における6つの最重要要素を理解することができます。トラクションとは実行力のこと。この本は単に、企業の経営責任者のためのものではありません。経営チームから全ての従業員までもを対象にしています。企業の構成員一人ひとりがビジョンを実現するために「実行」していく、そんな企業づくりのために必要な考え方とツールが詰まった一冊となっています。
EOSは中小企業の社長に向けた実践的な経営システムです。シンプルな考え方と実用的なツールによって、何千人もの起業家・経営者が「ビジネスにおいて得たい結果を得る」サポートをしてきました。社長として本来の業務に専念したい経営者の方、ご自身の会社のさらなる発展を本気で考えている方は、ぜひ一度ご相談下さい。
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