経営者保証とは何か知っていますか?
そしてそれがあなたの事業と個人的な財務にどのような影響を与えるのでしょうか?
中小企業にとって、資金ショートは倒産に直結する大きな問題です。そのリスクを軽減してくれるのが、金融機関からの融資ですよね。
しかし融資の際には、経営者保証を求められるケースも多く、それによって経営者の個人のリスクが大きく上がってしまいます。
この記事では、経営者保証の基本、その解除方法、保証なしで資金を調達するポイント、そして事業承継をスムーズに行うためのヒントを解説します。中小企業の経営サポートを専門とし、クライアントとの経営会議を毎年500時間、累計3,000時間以上こなしてきた経営コーチ、EOS®(起業家のための経営システム)の専門家と一緒に考えていきましょう。
経営者保証の影響を受ける可能性がある方、融資の受け方について情報を求めている方、また事業承継をスムーズに行いたいと考えている方々に向けて、本記事は貴重な情報源となることでしょう。
経営者保証とは
経営者保証とは、中小企業が銀行や他の金融機関から借入を行う際、その企業の経営者が自らを保証人として立て、責任を負うことを意味します。つまり、もし企業が経営破綻し、借入金の返済が不可能になった場合、経営者自身がその債務を負い、企業に代わって返済を行う必要があるということです。
経営者保証ガイドラインの3要件
経営者保証をめぐるガイドラインは、経営者と事業の健全な関係を築くための基盤となります。
経営者保証ガイドラインは、以下の3つの主要な要件を中心に構成されています。
イ)対象債権者と保証人との間の保証契約が経営者保証GL3項の全ての要件(※)を充足すること
経営者保証に関するガイドライン7項(1)
- 保証契約の主たる債務者が中小企業であること。保証人が個人であり、主たる債務者である中小企業の経営者であること(但書は略)
- 主たる債務者及び保証人の双方が弁済について誠実であり、対象債権者の請求に応じ、それぞれの財産状況等(負債の状況を含む。)について適時適切に開示していること
- 主たる債務者及び保証人が反社会的勢力ではなく、そのおそれもないこと
これらの要件は、経営者が金融機関からの融資を確実に受け、同時にリスクを管理するために不可欠です。
経営者保証ガイドラインの適用対象
経営者保証に関するガイドラインは主に中小企業や特定の業種に焦点を当てており、事業が金融機関からの融資を受ける際に、どのような基準や条件が適用されるかを定めています。
このガイドラインの目的は、中小企業が直面する特有の財務的課題やリスクを軽減するために設計されており、企業が持続可能な成長を遂げるための支援です。
適用基準には、企業の規模、事業が行われる業種、財務状況、そして過去の信用履歴などが含まれています。基準を満たすことによって、中小企業や特定業種の事業は経営者保証の枠組み内で融資を受ける資格が与えられます。
しかし、すべての企業がガイドラインの適用を受けるわけではありません。
特定の条件下では例外や特例が認められる場合があります。
例えば、財務基盤が非常に強固で、信用履歴が優れている企業や、極めて革新的な事業モデルを持つスタートアップなどは、通常の経営者保証の要件から免除されることがあります。
このような例外や特例は、ガイドラインは柔軟に適用されるため、各企業の状況に応じた最適な支援が可能となります。
経営者保証のガイドラインを適切に理解し適用することで、中小企業や特定業種の事業は金融機関からの支援をより効果的に活用し、事業の成長と発展につなげることができるのです。
経営者保証の問題点とは
経営者保証には、多くの問題点が存在します。
ここでは、問題点が個人、企業運営、さらには経済全体に及ぼす影響について解説します。
事業の失敗が個人の破産につながる
経営者保証は事業が失敗した場合に経営者個人が直面する経済的リスクが甚大です。
事業が破綻すると、経営者は自宅や貯蓄、さらには退職金を失うリスクに直面します。このような経済的リスクは、経営者にとって重大な心理的影響をもたらす可能性があります。
個人的な財産を失う恐れから、経営者が新たな投資や事業拡大といったリスクを伴う決断を避け、企業の成長機会を逃す原因となり得ます。
この問題を緩和するためには、制度的および個人的な対策が必要です。
制度では、政府や金融機関が中小企業向けの融資保証プログラムを提供し、経営者が個人資産を担保にしなくても融資を受けられるようにすることが挙げられます。
また、企業がリスク管理と財務計画を強化することで、経営者保証に頼らずに済むようにすることも重要です。
個人の対策としては、経営者は適切な保険商品に加入することや、個人資産と事業資産を法的に分離することで、リスクを軽減できます。
心理的なサポートやコンサルティングを利用することで、リスクを恐れずに事業運営に積極的に取り組む姿勢を養うことができるでしょう。
経営者が経済的リスクを適切に管理し、心理的な負担を軽減しながら、事業を安全かつ効果的に運営するのを助ける対策が必要でしょう。
思い切った事業展開をする会社が少なくなる
経営者保証の問題点は、新規事業や革新的な事業展開への意欲を抑制する側面も持っていることです。
経営者が個人資産を担保にする必要があるため、高いリスクを伴う事業に対して二の足を踏む傾向が強まります。
例えば、革新的なアイデアを商業化しようとするスタートアップ企業が、経営者保証の要求によって資金調達が困難になり、結果として画期的なプロジェクトの立ち上げを断念するケースにつながるのです。
新規事業や革新的な事業展開への意欲抑制は、市場競争や経済成長にも長期的な影響を及ぼします。
経営者保証が革新的な試みを抑制することで、市場には既存のビジネスモデルが支配的になり、結果として市場の活性化が阻害され、経済成長のペースが鈍化する可能性があります。
これは、特に技術進化が急速に進む現代において、国の競争力低下にも繋がりかねません。
経営者保証の制度を見直し、革新的な事業展開が促進されるような環境を整備することが、長期的な市場競争力と経済成長の観点から重要であると言えます。
事業承継のハードルが高くなる
経営者保証が事業承継を難しくする具体的な理由は、後継者が経営者の個人的な負担、特に財務的リスクを引き継ぐことへの恐れです。
経営者保証では、現経営者が個人資産を担保にして事業の融資を受けているため、このリスクが承継時に後継者にも及ぶことが多くなります。
後継者がこの重大な負担を恐れて事業の継承を避ける傾向があります。
家族経営の中小企業やスタートアップで顕著であり、後継者不在による事業の存続が危ぶまれる事態を生み出しているのです。
後継者が経営者保証の負担を恐れることで、経験豊富で能力のある若い世代が経営の場から遠ざかり、事業のイノベーションや成長が停滞する可能性が高まります。
この問題に対処するためには、制度改善や企業内対策が必要です。
政府や関連機関は、経営者保証のリスクを軽減するための制度を構築することで、事業承継を促進できる環境を整えるべきです。
例えば、保証の負担を軽減するための保険制度の導入や、後継者に対する財務的サポートを強化する政策が考えられます。
また、企業内での対策としては、経営者がリスク管理計画を策定し、後継者教育プログラムを通じて、将来の経営者に財務知識とリスク管理のスキルを提供することが重要です。
さらに、経営者は、事業承継計画を早期に準備し、後継者が経営リスクを理解し、それに対処する準備を整えることができるよう支援する必要があります。
これらの解決策を通じて、事業承継が円滑に進み、企業が持続可能な成長を達成するための基盤を強化できるでしょう。
経営者保証(個人保証)は外せる?社長として取るべき本当にリスクとは
最後に、経営者保証(個人保証)は外せるのか、社長として取るべき本当にリスクについて考えてみましょう。
経営者保証は解除できる
結論から言うと、経営者保障は解除することができます。
経営者保証を解除するための条件は、複雑で、具体的な手続きは金融機関や保証された契約の内容によって異なります。
経営者保証の解除は、事業の財務状態の改善、借入金の完済、または新たな保証人の提供などが条件です。
経営者が保証解除を求める場合、まず金融機関に対して正式な解除申請を行い、必要な書類を提出し、事業の財務状況や返済能力の改善を証明する必要があります。
この証明に時間がかかる場合があり、金融機関の評価と承認が必要です。
法的・制度的枠組みについては、経営者保証の解除は、各国の商法や債務関連の法律に基づいています。債務者と債権者の権利と義務を定めており、経営者保証の解除条件やプロセスに関するガイドラインを提供します。
また、事業再生や倒産法の枠組み内で保証解除が進められることもあります。
実際の事例として、ある中小企業の経営者が、事業の収益性を大幅に改善し、数年間にわたって安定したキャッシュフローを維持した結果、金融機関との交渉を通じて経営者保証を解除することに成功した例があります。この過程には、詳細な財務報告と、返済計画の遵守が含まれていました。保証解除によって、経営者は個人資産に対するリスクを減らし、さらに事業拡大に向けて新たな融資を受けるための道を開くことができました。
この事例は、経営者保証の解除が適切な財務管理と金融機関との積極的なコミュニケーションを通じて可能になることを示しています。
経営者保証の解除は、経営者にとって大きな財務的リスクの軽減をもたらし、企業の成長と発展のための新たな機会を開くことができる重要なステップです。
経営者保証なしで融資を受けるポイント
経営者保証なしで融資を受けるためには、金融機関の条件や期待を正確に理解し、適切な準備と戦略を立てることが重要です。
金融機関は、経営者保証を求める代わりに、企業の財務健全性、事業計画の実行可能性、市場での競争力、および経営チームの経験と能力など、より厳格な評価基準を設けます。
融資を成功させるためには、企業の財務諸表、過去の業績記録、事業計画書、市場分析レポートなど、金融機関が求める可能性のあるすべての書類を事前に準備し、整理しておく必要があります。
書類の提出方法については、金融機関の指示に従い、要求されたフォーマットで、完全かつ正確に情報を提供することが不可欠です。
交渉においては、自社の強みを明確に伝え、金融機関にとってのリスクが最小限であることを説得力を持って示すことが重要です。
事業計画の具体性と実行可能性を強調し、市場分析に基づく成長予測を提供することで、金融機関の信頼を獲得できます。
また、過去の成功事例や、特定の挑戦を乗り越えた経験を共有することで、経営チームの能力と事業へのコミットメントをアピールすることも有効です。
さらに、複数の金融機関からオファーを取り寄せ、それらを比較検討することで、より良い条件を引き出すことが可能になります。
融資条件の交渉においては、柔軟性と同時に、自社のニーズと長期的な財務戦略に合った条件を追求する姿勢が求められます。
これらのステップを踏むことで、経営者保証なしでの融資の可能性を高め、企業の成長と発展を支える資金を確保することができるでしょう。
社長自身が経営計画やビジョンを明確に説明できることが前提
経営ビジョンは、融資獲得において極めて重要な要素です。
金融機関が単に現在の財務状況だけでなく、企業が将来どのように成長し、市場で成功するかのビジョンを重視するためです。
経営ビジョンが明確で、説得力がある場合、金融機関はその企業への投資が将来的に価値を生み出すと判断しやすくなります。
そのため、経営者は自社の長期目標と成長戦略を明確にし、効果的に伝えることが求められます。
明確に伝えるために重要となるのがプレゼンテーションスキルです。
成功するプレゼンテーションは、聴衆の注意を引きつけ、情報を明確かつ簡潔に伝え、聴衆が内容を理解しやすいように構成されています。
視覚的なサポート(スライドやグラフ)を使用して重要な点を強調し、事業の潜在的な価値と成長の見通しを具体的に示すことが、信頼と興味を引き出す鍵となります。
さらに、具体的かつ実現可能な事業計画の策定は、融資獲得に不可欠です。
事業計画には、市場分析、競合分析、マーケティング戦略、財務予測など、企業の目標達成に向けた詳細なロードマップが含まれている必要があります。
事業計画を作成する際には、現実的な目標設定が重要であり、過度に楽観的または悲観的な予測を避けるべきです。
また、事業計画は定期的に見直しを行い、市場や業界の変化に応じて適宜更新する柔軟性も持たせる必要があります。
これらの要素を兼ね備えた事業計画は、金融機関にとって、融資の判断材料として非常に価値が高くなります。
経営ビジョンの実現可能性を具体的に示すことにより、経営者保証なしでの融資獲得の可能性を高めることができるでしょう。
まとめ
この記事では、経営者保証の基本、その解除方法、保証なしで資金を調達するポイントについて書きました。
経営者保証は、企業が金融機関から融資を受ける際に経営者が個人資産を担保として提供することを指します。このシステムは事業の失敗が経営者の個人破産につながるリスクを持ち、革新的な事業展開を減少させ、事業承継がしづらくなるという特徴がありましたね。
しかし、経営者保証は解除は可能です。経営者保証なしで融資を受けるためには、経営者が事業計画やビジョンを明確に伝える能力が重要です。
しっかりとした企業のビジョンを持ち、それを計画に落とし込むには、会社としての一体感・仕組みが必要です。
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