日本の中小企業(オーナー企業)において「ワンマン経営」は珍しくありません。しかし、会社の規模が大きくなるにつれ、一人の経営者が経営全体を統括することは難しくなってしまいます。企業が継続的に成長し、会社が存続していくためには、経営幹部の意見を積極的に取り入れ、チームとして多声的に会社を経営していくことも大事です。
そこで今回は、会社が大きくなるためには「ワンマン経営」「チーム経営」どちらが最適なのか、双方の視点から考えます。
ワンマン経営とは?
ワンマン経営とは、社長が一人で経営判断を行うこと
ワンマン経営とは、その名の通り一人の人間(=ワンマン)が経営を行うこと、または行っている状態のことです。企業規模に関係なくワンマン経営を行っている会社は多くあり、社長が圧倒的に優れていて、自他共に認める“カリスマ”である場合などはワンマン経営になりやすい傾向にあります。
ワンマン経営の会社であっても、会社としての重要な決定は取締役会などで可決されますが、そのような場においても社長の意見が絶対であるというような雰囲気になっている場合が多いです。
なぜワンマン経営になるのか 中小企業はワンマンが当たり前なのか?

ワンマン経営の対極に位置する経営とは?
ワンマン経営の対極にあるものとして、チーム経営があります。チーム経営とは、会社における各部門のリーダーを集め結成する経営チームのもと会社を運営していく方法です。機能する経営チームを組むことで、意見の多様性が生まれ、会社の成長に繋がりやすくなります。また、チームとして会社を経営することで社長は自分の得意分野に集中することができます。もちろんそれぞれのメンバーもそれぞれの得意分野で経営に関わることができます。経営チームを結成することは、会社内での多様性を広げていくことであり、より多くのメンバーが経営に参加できるという点でワンマン経営の対極に位置しています。
以下の記事では経営チームのつくり方について紹介しています。こちらも参考にしてみてください。
経営チームのつくり方は?経営チームのメリットを紹介 – EOS JAPAN 起業家のための経営システム
ワンマン経営のメリット
ワンマン経営というと、よいイメージがない方も多いかもしれませんがしっかりとしたメリットも存在します。ワンマン経営のメリット:意思決定が速い
ワンマン経営の最大のメリットは、意思決定が早いことです。チーム経営により多様性を受け入れると、何かを決定する際に様々な意見が出るので、総意としてまとめるにはどうしても時間がかかってしまいます。しかし、ワンマン経営では社長一人の意見が全てとなるので、意思決定のために時間を要しません。ワンマン経営のメリット:責任の所在が明確
ワンマン経営の場合、社長以外に意思決定をする人がいないので、何かあった時に責任の所在がはっきりします。経営に関することで問題が起きた際に、チーム経営では責任のなすり合いのようなことが起こる可能性もありますが、ワンマン経営ではそのような事態も回避できます。ワンマン経営のメリット:緊張感のある職場になる
ワンマン経営の会社の社長は良くも悪くも絶対的な権力者であり、社員は常に社長の目を意識しながら業務を行うことになります。社長がいわゆるカリスマであればあるほど社長に対する畏敬の念が生まれ、職場に緊張感が生まれます。適度な緊張感はパフォーマンスを向上させ業務にもハリが出るので、メリットと言えるでしょう。ワンマン経営のデメリット
どのようなものにも必ずメリットとデメリットがあります。ワンマン経営についてもこれを確認しましょう。ワンマン経営のデメリット:経営者に負担がかかる
ワンマン経営では経営に関する全ての責任が社長にかかってきます。何か問題が起こったときには矢面に立ち、時として非難や攻撃も一手に引き受けなくてはならないので、負担が大きすぎるという考えもあります。ワンマン経営のデメリット:従業員が育ちにくい
会社としてのほとんどの意思決定を社長が行うということは、経営幹部も含め社員の裁量権が極めて少ないことになります。何をやるにしても社員の意見やアイディアが反映されず、ただ社長の決定に従うだけの毎日では、社員の主体性や自律性が育たなくなり、会社としての成長が停滞してしまいます。ワンマン経営のデメリット:従業員からの信頼が簡単になくなる恐れがある
ワンマン経営では経営に関する意思決定を行うのが社長一人なので、経営がうまくいかなくなったときに社員の不満の矛先は社長に向きます。経営がうまくいっているうちはいいのですが、経営が傾くとあっという間に社員からの信頼がなくなります。ワンマン経営のデメリット:企業風土に影響がでる
ワンマン経営は少なからず会社全体に威圧的な雰囲気をもたらすので、社員によっては重圧に耐えられず離職する人もいます。意見が反映されず、裁量権もほとんどない状況では、社内に閉塞感が生まれ、企業風土が悪化する可能性もあります。ワンマン経営とチーム経営、どちらを選択すべきなのか

ワンマン経営が必ずしも悪とは限らない
ワンマンという言葉には「横暴」「独裁」などのイメージがあるかもしれませんが、ワンマン経営は必ずしも悪いものではありません。ワンマン経営を行う張本人である社長が本当に優れた経営者で、人望も厚い人格者であれば、そのワンマン経営はうまくいくでしょう。ワンマン経営のメリットとして意思決定の早さがあるので、社長が常に正しい判断を下せるのであれば、会社は驚くようなスピードで成長します。他にも、「この社長について行きたい」と思う社員が多ければ、会社としての一体感が生まれます。
ワンマン経営=悪ということではないので、ワンマン経営でうまくいっているのであれば、わざわざ経営チームを結成して会社を運営していく必要はないでしょう。
会社に合った経営方法を選択すべき
ワンマン経営にもチーム経営にもそれぞれの良さがあり、どちらが正解ということではありません。会社規模や会社方針、社長の性格や経営手腕などから慎重に判断し、どちらのスタイルで経営していくかを決めるとよいでしょう。ただし、会社が成長するにつれて業務領域が拡大し、いずれワンマン経営でやっていくのが難しくなるかもしれません。チーム経営では経営業務が分業体制になるので、経営の負担が一人に集中せず、社長と経営幹部がそれぞれ自分の得意分野を持ち寄って経営に参画できます。どのような経営スタイルを選ぶかは会社の理念やビジョンによるところも大きいので、どのような会社にしていきたいのかも含めて慎重に選びましょう。
ワンマン経営を辞めるためにはどうすればいいのか
もし、ワンマン経営が原因で自社の成長が停滞していると感じるのならば、ワンマン経営を脱却して経営チームを結成することをおすすめします。ワンマン経営を長く続けていた会社は、いきなりガラリと経営スタイルを変えることは難しいので、少しずつ意識改革をして行きましょう。まず、従業員の主体性や自立性、責任感を養うことが必要です。ワンマン経営では社員は長いこと言われたことをやっているだけなので、例え小さなことでも自分が意思決定に参加できるという意識を持つことが大事です。些細なことでもいいので、社員に「あなたならどう思う?」と聞き、意見を反映させていきましょう。
次に、経営をチームで行うことの良さを伝え、経営スタイルの移行に対する抵抗を取り除きましょう。チーム経営による成功事例を紹介し、チーム経営になったときの社員一人ひとりの働き方を具体的に伝え、ポジティブなイメージを持ってもらいましょう。
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